小さな奇妙

 翌日。礼拝のあと朝から二人は、屋敷を探索しにかかった。神父は本当に自由にさせてくれたし、かといって協力的であったかといえば微妙だが、というのも神父は村の重役でもあり、仕事を兼任しているらしく忙しそうだったのだ。


 神父の部屋、神父の指摘したよく奇妙な出来事が起こる(ポルターガイスト)リビングの鏡、食器棚、隣の部屋のクローゼットなど。神父がノートに現象を書き起こしてくれていたために、調査はスムーズにいった。といっても、それが霊的であるかどうかの調査、下手な仕掛けがないかとか、悪魔の痕跡がないかとかである。その間、奇妙な事にきづいたが、黙っているノレアがいた。

 その不自然さに気づいて、シスターエンリルが尋ねる。

「ノレア、どうしたの?体調でも悪くて?」

「い、いえ、違うのです」

 たったったった。家の中を走り回る小さな足音をきいたが、エンリルは、そんな小さな存在が何かをするわけはない、こんな手間のかかることを、そうかんがえていた。だが彼女の脳裏に浮かんでいたのは、あの神父の娘“エレナ”が悪魔に憑依しているという姿だった。

「!!」

 その考えが頭によぎるたびに、顔を横にふって何とかごまかそうとする。ふと、そんなことを考えていると目の前に突然壁がたちはだかった。

【ふぁさっ】

 壁というのが、シスター・エンリルのやわらかな背中だった。と同時に

「きゃ」

 という小さな声が前方から響く。そこにいたのは、無表情でいつも厳かな表情と態度でいるその屋敷のメイド。目の吊り上がっり、髪の毛を玉ねぎのようにまとめた、スコーナである。昨日はたまたまいなかったが、神父が家をあける事の多い日中、この家では彼女に様々な事を任せている。

「お礼拝の時間です」

 無表情に抑揚なく伝えられ、シスターたちは顔を見合わせた。

 

 礼拝が終わると、スコーナが、二人によびかけた。

「あの」

 シスター・エンリル

「何か?」

「そのノートにないことが、きっと旦那様が隠していることがあるのです、この後お時間があるのならば、私についてきてくださいませんか」

「ええ、それは、かまいませんけど」

 そういって、またもや二人のシスターは互いに顔を見合わせるのだった。協会の天辺のガラス、ステンドグラスの真正面には、十字架が掲げられていた。

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