エレナ 二人のシスター レイとユラ

 話が終わったそのとき、ノレアはピアノの演奏が終わっている事に気づいた。神父もまたきょろきょろしているノレアを見て悟った。

「ああ、彼女をよんできますよ」

 しばらくすると行儀よく挨拶をして、お辞儀をするオリエラ、まだ小学校に低学年という感じで、おとなしい少女だった。おじぎをしてちょこんと椅子に座ったのをみて、ノレアは

「かわいい」

 とぽつりともらした。


 しばらくするとある部屋を案内された。朝昼晩の礼拝意外は自由に家をつかっていいというので、今日はしばらく休息をとる事にして、部屋のかたずけをした。


 部屋といっても屋根裏部屋のような場所で、ほこりがつもっており、クモの巣がはっている。それを嫌々ながら二人で掃除をしたのだった。二人で家具などを設置したり、雑巾をかけたり、ホウキをかけたりするその途中、ノレアがエンリルに質問をしてきた。


「シスターエンリル、あなたはどうして、そんなに真面目なのですか?」

「え?私まだ何も……」

 いえ、ここにくるまでもその姿をみせてもらいました。なんども私を助けて下さり、その際に文句もわれなかった。それだけじゃなく、聞けばあなたは郊外の出身だそうで、ひどく、嫉妬されていたというじゃありませんか。その、同僚のシスターたちに……ひどい目にあわされた噂を聞きます。それでも私になぜこんなにやさしくしてくださるのですか。


「それは……」

「?」

 少しばかり間をおいて、ためらっていたが、ひとたびやめた掃除の手をまた進めはじめて、シスターは昔話をはじめた。


「私には、二人の恩人がいるのです」


 ―私には、二人の恩人がいたのです。郊外の協会で、私を拾い育ててくれただけではなく、私に人間のやさしさや温かさをくれた。それだけではなく、あの二人は……奇跡をみせてくれたのです―


「奇跡?」

「彼女たちは“精霊石”を生成できた」

「!?それって、美しく、魔を退ける力があるという」

「ええ、強力なものよ、ほとんどは教会に没収されたけれど」

「“精霊石”は“退魔道具”に使われるとされますね」

「ええ、シスターの二人はそれに協力していたわ、私は二人を尊敬していた、けれど、ある時、私が16になるとき彼女たちは失踪してしまった」

「失踪……」

「奇妙な書置きを残して“私たちはあなたをまもれず、あなたは私たちをまもれない”」

「変な書置きですね」

「ええ、だから私はどこかでいまも二人のシスターを探しているの、恩人のレイと、ユラを」





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