第23話:私、負けないから。

次の日、莉子は会社に出勤していた。

また揉めるといけないと思って昨夜の出来事は美咲には話さなかった。


きっと忠彦も出勤してきてるはず・・・。

莉子が昼食に社員食堂を利用してることは忠彦も知ってる。

たぶん、彼は来ると莉子は思った。


莉子は社食で適当に日替わり定食を注文した。

で、テーブルに腰掛けると、誰かが自分の前の椅子に座った気配を感じた。

最初に忠彦と出会った時のように・・・。

莉子はそれが誰なのか、あえて確かめはしなかった。


「信じてるよ、私・・・でも」


「分かってる・・・僕が悪いんだ・・・」

「たしかに玲子とは別れた・・・でも過去のことを君に話さなかったことは

僕に責任がある・・・包み隠さず話してたら、こんなことにはならなかったと

思うからね・・・だから余計な誤解を招いてしまった・・・ 」

「ほんとにすまない・・・ 」


「私、大丈夫だよ、ちょっとビックリしただけだから・・・」

「もし、あの人が忠彦とヨリを戻したいって言っても私、負けないから 」

「愛の力だよ・・・私だって強くなってるんだよ・・・」


「え?・・・そうなの?」

「僕はまた、別れるって言われるかと思って・・・」

「昨夜から、なんて説得しようかってずっと考えてたんだ」


「そうなんだ・・・ごめんね」

「私も昨夜はちょっとパニクってたから・・・」

「家に帰って、冷静になって考えたら、忠彦と玲子さん、もう別れてる

んだから・・・それに引き換え私は忠彦と現役で恋人同士だもんん」

「過去の玲子さんより、現役の私のほうが有利に決まってるでしょ?」


「私さえしっかりしていれば何も恐れることなんかないって思って・・・ 」


「有利って・・・そうか〜・・・ああ、よかった〜」

「まじで別れるって言われたらどうしようかって思ってたんだ」

「肩の力がどっと抜けたよ・・・」


「別れるって言ったらどうするつもりだったの?」


「そりゃ、土下座でもなんでもして考え直してもらってたさ」

「もしそんなことになったら僕だって煮え切らない気持ち抱えて後悔だらけだよ 」


「だから、もしそうなったらもう一回莉子をナンパする」

「今度はお互い知ってる同士だから、抵抗なく付き合ってもらえるだろ」


「面白い人だね、忠彦って」


「玲子が書き置き残してたよ・・・もう二度と来ないって、お幸せにって」


「そうなんだ・・・気をもんで損しちゃった」


「今日、仕事終わったら、マンションに来てくれる?、待ってるから」


「うん・・・でも、もうなにもないよね、また次何か出てきたら今度こそ怒るよ」


「ないない・・・神に誓って」


To be continued.





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