第20話:忠彦との絆。
「莉子、大丈夫?」
「ほら、ここに 座って・・・ 」
「少しは落ち着いた?」
「ごめんね、美咲のこと悪く思わないでね」
「私もちゃんと確認しなかったのも悪いんだけど・・・」
「分かってるよ」
「いきなりだもんね、僕に奥さんと子供がいるって・・・」
「一番、驚いたのは僕だよ」
「僕が、そんないいけげんな男だと思った?」
「信じてたけど・・・」
「あんな書類見せられたら・・・」
「ほんとに僕に奥さんと子供がいたらどうするつもりだった?」
「そんなこと・・・分かんない」
「僕への気持ちが冷めたのかな」
「そんなことないけど、もし奥さんと子供がいても忠彦と別れられない・・・」
「そんなの無理」
「忠彦がいない世界なんて考えられないもの」
「そうだね、僕も莉子がいない世界なんて考えられない」
「もっと近くにおいで・・・」
忠彦は莉子の肩を優しく抱いた。
「君と出会うのが早くてよかった」
「そっと、しといてあげるから、嫌なことは忘れてゆっくりおやすみ」
「一緒にいて、ここにいて」
「いいよ、眠れないのなら、世があけるまで、ずっとそばにいてあげる」
長くて静かな夜だった。
「夕飯は?、食べたの?」
「食べてない・・・何も喉を通らなくて・・・」
「たしかにね、あんなもの見せられたら、ご飯なんて喉通らないね」
「冷凍パスタならあるけど、温めようか?」
莉子はうなずいた。
「ホッとしたらお腹がすいてきた」
その夜はふたりソファで毛布にくるまって過ごした。
莉子は忠彦と触れ合うことで、抱き合うことで安心したかった。
今のふたりに言葉などいらない。
見つめあって、確かめあって、愛というしじまの中に溶けて時には激しく、
時には優しくうねる波のように揺れながら深い混沌へと沈んでいった。
朝になるとくるまっていた毛布はどこかへ行ってしまって、 ふたりの服も脱ぎ捨てられたまま、そこら中に散らばっていた。
昨夜の出来事と、うらはらに清々しい朝だった。
そのことが、きっかけとなった訳じゃないが、ふたりの絆はよりいっそう
強いものになっていった。
To be continued.
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