第18話:忠彦のうそ。

「あんた、まだあの男と付き合ってるみたいね」


「うん・・・」


「あんたが泣きついて来ないから、うまく行ってるのかとは思ってたけど・・・」


「うまく行ってるよ」

「もう別れられない・・・」


「何言ってるの」


「私、彼のこと愛してる・・・」


「ちょっと、まじで


「あんた、まさかあの男と寝たんじゃないでしょうね」


「・・・・」

「うそ・・・」

「もう、どうすんのよ」


「美咲は彼のこと知らないんだよ」

「あの人は、美咲が思ってるような、いい加減な人じゃないよ」


「なんでそうだって言えるのよ」


「あの人と付き合ったら分かるよ・・・一見チャラそうだけど」


「それは本当の彼じゃないかもしれないじゃない」

「あんた、騙されてないって、どうして言えるの」

「絶対、あの男なにかある」

「分かった、私があの男の化けの皮剥いでやる」


「美咲・・・何考えてるの」


「あんたはいいから、私に任せといて・・・」

「念のためよ」

「ちゃんと、素行調査して、何もでなきゃあんたも安心でしょ」


「彼のこと調べるの?」

「それって、失礼にならない?」


「何も出なきゃ黙ってたらいいじゃない」

「もし、万が一、何か出たら・・・」

「可愛い妹を泣かせたら、私が承知しないから」

「とにかく任せといて・・・」


そう言って美咲は莉子と別れた。


それから忠彦から何度か連絡があったが、 忠彦のほうにどうしても海外に用事があるからと言って、しばらくデートはお預けになった。


(自分の夢を叶えるために奔走してるんだろうか・・・)


莉子は忠彦に会えないと思うと、少し切なかった。

それから1週間・・・美咲から連絡が入った。

美咲は莉子のマンションにA3の茶封筒を持ってやってきた。


開口一番。


「あんた、とんでもない男に捕まってるわよ」


そう言って封筒の中から書類を出した。


「あんた、あの芹沢って男、奥さんいるわよ」

「何言ってるの・・・何かの間違いでしょ」


「そんな、そぶり無かったし・・第一にあの人マンションにひとり 住んでるのよ」 「女の影なんてなかった・・・まして子供まで?」

「ガールフレンドならいるって言ってたけど・・・」


「私にずっと隠してたわけ・・」

「そんなこと、できるの・・・ありえない」


「私ね、興信所に頼んであの男のこと調べてもらったの」

「そしたら、奥さんもいるし子供もふたりいるって」

「だから言ったでしょ、騙されてるって」


素行調査の内容では、はっきり妻の名前と子供ふたりの名前が書いてあった。

莉子は体の力が一気に抜けていくのを感じた・・・信じられなかった。

何度書類を確認しても文字は消えるはずもなかった。


莉子はあまりのショックに半ば放心状態になった。

本人にあって確かめるしかない・・・そう思った。

すぐに忠彦に連絡を取った。

携帯の電源が切られているのか忠彦には連絡がつかなかった。


「もう、こんな時に限って・・・」


明日、このことを忠彦に問い詰めようと思ったが、今夜は眠れそうになかった。

その日の夕方


「私、あの人のマンションまで行ってくる」

「私も一緒に行く・・・」


美咲はそう言って莉子より先にヘルメットをかぶった。

莉子は美咲をレブルに乗せて忠彦のマンションに向かった。

心ここにあらず・・・どこをどう通ったか思い出せないほどパニク っていた。


「あんた気をつけてよ・・・落ち着いてね」

「一緒に事故るの嫌だよ」


「わかってる」


忠彦が今まで自分を騙してたのかと思うと腹が立つ以前に騙された自分が

情けなかった。

忠彦のマンションの明かりがついていた。

玄関のチャオムを鳴らすと、ドアを開けて慶彦が出てきた。


「莉子、どうしたの?、こんな時間に?」

「美咲さんも・・・一緒に」


莉子は忠彦を見た途端、玄関にしゃがみこんで、泣き出した。


「莉子・・・」


To be continued.

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