第13話:真意。
「君、お父さんはお亡くなりになったって言ってたけど・・・」
「お母さんは?」
「ふるさとで元気にしています」
「それはよかった、お母さん大切にしてあげなきゃね」
「はい、毎日のように電話がかかってきます」
「君のことが心配なんだよ」
「どこの親も同じだ・・・」
「忠彦さ・・・忠彦のお母様も?」
「同じだよ・・・いくつになっても子供扱いだよ」
「ご兄弟は?」
「僕の上に兄がひとり、妹がひとりいて三人兄弟」
「君は?」
「私は一人っ子」
「あのカフェで私と一緒にいた子、知ってますよね」
「美咲さんね、おっかない子」
「あの子高校の時からの同級生で一緒に上京してきたの」
「だから、本当に親しい子はあの子だけ」
「私はひとりっこで育ったから彼女とは本当の姉妹みたいな関係なんです」
「どっちかって言うと彼女は私のお姉さん的存在かな」
「へ〜じゃあお姉さんには嫌われないようにしないとね・・・」
「僕のことあまりよく思ってないみたいだから」
「あんな登場の仕方したら誰だって、怪しみますよ」
「やっぱり?・・・でもどうしても君と話がしたかったんだもん」
「
「今は思ってないけど・・・でも男の人なんて何考えてるか分からないでしょ」
「それって偏見だよ」
「あくまで一般論です」
「まあ、僕の行為はルール違反かもしれないけど・・・」
「それでも、僕と付き合ってほしかったんだ」
「僕も君のこと知りたいし、君にも僕のこともっと知ってほしい」
「ね、付き合ってみて、それでもダメって思ったら言って」
「二度と君の前に現れないから・・・そのくらいの覚悟でいるんだよ」
「ね、だから付き合ってくれる?」
「でも、私の他にも付き合ってる女性いるんでしょ?」
「ガールフレンドはたしかに何人かいるけど・・・」
「大学時代からのただの友達」
「向こうから近寄ってくるだけで、付き合ってるわけじゃない」
「それにみんな僕の金目当てだって前に言ったよね・・・」
「金がなくなったら、蜘蛛の子散らしたみたいにいなくなるよ」
「結局、みんな金で繋がってるんだ」
「そう言うしがらみからも、もう逃げたい・・・」
「そのためにも、きっかけがほしいんだ」
「それが君だとは言わないけど・・・でも君になら心を開けそうな気がする」
「ね、だから・・・」
「分かりました・・・」
「付き合ってあげます・・・しかたない人ね」
「食事とデートだけですよ・・・」
「ほんと、まじで?」
「やった・・・風邪治った」
「ありがとう莉子ちゃん・・・莉子」
「ゲンキンな人ね」
「僕にとって、生まれてはじめての一番ハッピーな夜だよ、この風邪は
無駄には終わらなかったよ・・・」
莉子は笑いながら、はしゃいでいる忠彦にこの人の真意を見た気がした。
セレブなんて言われて持てはやされてはいるけど、本当は孤独なのかも
しれないって・・・。
(その孤独を私に埋めてほしいの?・・・)
ふと壁掛け時計を見ると、針はまだ9時を指していた。
おやすみまでにはまだ少し時間がある。
お風呂に入って、忠彦から出されたパジャマに着替えた。
シルクの下着、シルクのシャツにシルクのショートパンツ。
莉子はシルクなんて着慣れてないから自分に似合ってるか少し不安だった。
「シルクなんて着慣れないから・・・どうかな?」
「とってもいい・・・そのパジャマ、可愛くてよく似合ってる」
恥ずかしそうにしてる莉子を見て、忠彦は思った。
(何もしないから、なんて言うんじゃなかった)って・・・。
To be continued.
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