第6話:二度めの誘い。

電話の向こうで美咲は興奮していた。


「 あんた、あの男とデートしたの? 、うそでしょ、あんなチャラいのと・・」

「何考えてるのよ、二度とダメよ」


美咲はすごい剣幕だった。

美咲にだけは昨夜の出来事を話した。


「だって、私の部署に来て仕事のじゃまするんだもん」

「夜、付き合ってくれたら、ここから退散するって言うから・・・」


「なんでよ、第一あんたの会社、なんでチャラ男が知ってるの」


「それがね、あの人うちの会社の社長だって」

「え?・・・社長?」

「あの男が?」

「マジで?・・・」

「あんた、社長に、見初められたの・・・」


「そういう訳じゃないけど・・・」

「実は、今度彼の別荘に来ないかって誘われてる・・・」


「断らなかったの?」


「まだそんなに知らない人だけど悪い人じゃなさそうだし・・・」

「なんでそんなこと分かるのよ」

「でもさ、社長っての・・・ちょっと美味しいよね」

「セレブじゃん」


「セレブとか私、あんまり興味ないから・・・でも趣味は合いそう」

「私、バイクが好きでしょ、忠彦さんもバイク趣味みたいだし・・・」


「忠彦さんって・・・あのチャラ男、忠彦って言うんだ・・」

「あんた・・・絶対遊ばれるよ」

「ああ言う男って、絶対他にも女いるでしょ」

「真っ白なんて絶対ありえないから」


「分かってる・・・もう誘われても相手しないから」

「私とは住む世界が違うし・・・」


「本当だよ・・・あんたおぼこいところあるんだから油断しちゃだめだよ」

「いい?、今度は約束しちゃったんなら、しかたないけど

次、誘われたらはっきり断りなさいよ、分かった?」

「大丈夫だよね」


「大丈夫・・・ちゃんと断るから・・・じゃあね、またね」


次の日、仕事が終わって会社の玄関を出ると、案の定忠彦が待っていた。

二度目のお迎えは、真っ白なポルシェ・・・ポルシェ911カレラだ った。


「フェラーリは似合わないって言ったから・・」


「やっぱり私行けないです」


「そんなこと言わないでさ・・・約束したでしょ」

「破るつもり」

「そんな人じゃないよね」


「やっぱりダメです・・・・今夜は用事がありますから・・・」

「また、今度誘ってください・・・」


「あ、言ったな・・・今度って・・」

「あ・・・」


「じゃ、今夜は諦めるけど・・・次の土曜日、空いてる?」

「僕も君が休みの時のほうがいい・・・君と長くいられるから」

「付き合ってくれるよね」

「僕の別荘にご招待するから・・・ガレージにバイクもあるし」

「見てみたいでしょ・・・バイク」


「見たいですけど・・・」


「じゃ、土曜日」


「お家まで迎えに行くから・・・どこに住んでるか教えて」

「さすがに僕も君の住まいを調べたりするような失礼なことはやらないから」

「あと連絡先も・・・僕のも教えておくから・・・」


莉子はしなかたなく自分の携帯番号を忠彦に教えた。

言葉を返す間も無くどんどん押されてしまった。


(フェラーリにポルシェまで持ってる・・・)


お金だけで、なんでも解決してしまえるような人・・。

そんな人、信用していいのかなって莉子は思った。


結局、土曜日のデートは断りきれず、忠彦に押されるまま、莉子はつい

「うん」って言ってしまったが、彼には莉子のような気の小さい女性にとって、

どこかあがないきれない、人を惹きつける魅力があった。


To be continued.

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