第4話:CEO。

ある日、莉子は自分のディスクで仕事をいていると、誰かが自分の 横に

スッと入ってきた気がした。

気配を感じた莉子は左上を見た。


「あなた・・・」

「何? なんでここにいるんですか」

「こんなところまで来るなんてどうかしてます」

「警備員呼びますよ」


「いいよ、呼んでも・・・僕なら大丈夫だから」


「何言ってるんですか・・・何の用ですか」


「この間、食事でもどう?って言ってたでしょ」

「今夜あたりどうかなと思って、お誘いに来たわけ」


「その前に、どうして私がここにいるって分かったんですか?」


「ん〜前にも言ったでしょ、君のことはよく知ってるって」

「昼休み以外はここにいるはず・・・」


「まるでストーカーですね」


「心外・・・僕は君を拘束したり束縛したりはしないよ」

「ただ、仲良くなりたいだけ・・・」

「正直に言うと君に恋しちゃったからね」


「こんなところで・・・やめてください」

「みんな見てますよ・・・恥かしい」


「分かった、退散するから・・・食事・・・行くよね、約束して?」


「ダメです・・・」


すると忠彦は声を高めて、


「じゃあ・・・」

「みなさん・・・ご紹介します」

「ここにいる篁 莉子たかむら りこさんは・・・僕と・・・」


「ちょ、ちょっと、やめてください」


莉子は慌てて忠彦を止めた。


「分かりました、わかりましたから・・・」

「しょうがない人・・・」

「でも一度だけですよ」


「ラッキー、じゃ今夜、車で会社の玄関先で待ってるから」

「なにかご希望の車ある? ポルシェなんかどう?」


「バイクならタンデムしてもいいですけど・・・」


どうせ、バイクになんか興味ないだろうと思って莉子はそう言ったが、

彼はあっさり


「いいよ、じゃあ決まり、バイクで、迎えに来るね」


忠彦はそう言って去っていった。


(うそ・・・バイクまで持ってるんだ・・・)


すると莉子の同室の一個先輩が慌てて莉子のところにやってきて


「篁さん、社長となにかあったの?」


「社長?・・・社長って?」


「さきの人・・・社長さんよ」


「え?あの人、社長さんなんですか?」

「どこの会社の?」


「あなた、何言ってるの、ここの会社の社長だよ・・・CEO」

「知らなかったの?」


「うそ」


「ま、新入社員だし、あまり面識ないか・・・」

「でも新入社員の歓迎パーティーの時、いたでしょ、覚えてな い?」


「え?覚えてないです・・・」


「なにがあったか知らないけど、気をつけたほうがいいわよ」


「あの人が社長って・・・」


そう莉子が忠彦をどこかで見たことがあったのは新入社員の歓迎パーティーの

時だったのだ。

思い出した・・・そう言えば、あの人社員の前で挨拶してたっけ。

見たことがあるはずだった。


その時は忠彦の姿を見ても、さほど悪い印象は持たなかった。

でもそれなら莉子にとっては余計プレッシャーだった。

食事の約束なんかするんじゃなかったって莉子は思った。

でもそう思う反面、バイクと言う共通のワードが出てきたことで忠彦という

人物に対して少しだけ興味が湧き始めていたのは確かだった。


To be continued.

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