ダンジョンって?

前話を少し書き直しました。

すでに読まれた方は、もう一度、読んでいただけると嬉しいです。

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「レベルが上がったってどういうこと? ゲームか何かの話なの?」


 自らの体に起きたことを理解できず、悠は頭にハテナを浮かべながら聞き返してきた。


「ダンジョン攻略のトップを走っている、咲鐵さきがねってパーティーは知ってるか?」


 その質問に、3人は頷いた。


「あいつらの動き、どう見ても人間離れしてるよな?」


 「うんうん」と3人は頷く。

 咲鐵さきがねだけではない。

 ダンジョン攻略のトップランカーと言われるパーティーの攻略動画などを見ているが、そのどれもが人並み外れた身体能力を持っている。

 そして、攻撃されたとしても、怪我が浅い時がある。


「俺は、3人以外にダンジョンに潜っている奴を知らないからダンジョン外での生活が分からなかった。だから確信が持てなかったが、悠の一件で合点がいった」


 「私が?」と言うように、悠は自分に指さした。


「悠、体で特に変わったことはないか?」

「う~ん……特に気になったことはないけど、強いて言えばお腹が減りやすくなった――とか?」


 「どやさ!」といった表情で自身の体に起きた変化を説明してくれたが、たぶん成長期とかそういったところだろう。


「いや、他にあんじゃん!」


 突っ込んだのは涼子。

 思うところがあったのか、朱音も口から手が出そうな状態になっていたけど、涼子の突っ込みの方が早かったので飲み込むに留めた。


「この間の短距離走! 明らかにタイム上がってたじゃん!」

「あぁ、あれは――日頃の頑張り……かな?」


 思い至るところがあったのか頷く悠だったが、その理由はふわふわしたものだった。


「嘘つけぇぇぇええ!!」


 全く納得のいかない涼子は、その容姿に似合わない図太い声を上げた。


「おじさん、レベルの話、早くしてよ」


 鼻息荒く先を促す涼子に、どうどう・・・・となだめる。

 焦ってはいけない。


「俺が知ってる――」


 と言いかけたところで、これから話す内容は向こうアルセイバルでの話になるので、どうぼかしたものかと一瞬迷う。

 しかし、ぼかし過ぎても話が伝わらないだろうし、そうしたら今までやっと積み上げてきた3人との信頼関係が崩れてしまう可能性がある。


「――俺がこれから話すのは、俺がキラキラスリースターズを最強・・冒険者へと育て上げるために、ある仮説を使っていたことから説明しなければいけない……」

「「「ある仮説?」」」


 3人が雷に打たれたような驚きをするかと思っていたけど、それ以前の問題で、「何を言っているのか分からない」といった表情で俺を見た。


「ゲームとかである“レベル”ってのは分かるよな?」


 「うん、うん」と3人は頷く。


「先日、悠と攻略した地下の未探索領域の最後で、その階層のコアと思われる物を見つけた。そのコアに触れることで、悠のレベルが上がり、そのレベルが上がることで悠の身体能力がアップしたってわけだ」


 実際、あの時はあれがダンジョンコアか分からなかったけど、今の悠の状況を見ればコア――つまり本当のお宝だったってのが分かる。

 表のお宝――つまり、現物も存在しているのだが、大体が国に徴収されているらしいから、こういったレベルが上がる系は本当にありがたい。


 もちろん、地道に敵を倒していくだけでもレベルは上がる。

 それが、咲鐵さきがねといった攻略パーティーたちだ。


「じゃぁ、私たちがレベルを上げるためには、咲鐵とかと同じ階層に行かないとダメってこと?」


 「え~、無理じゃ~ん」と積まれたビール樽の上で器用に背をそらす朱音。

 身体能力は高いからひっくり返る心配はないんだろうけど、倒れそうで怖い。


「いや、俺の予想では今回、コアが見つかったのは初めてだと思う」

「なんで分かんのさ?」


 面白くなさそうに聞き返す朱音。


コアってのは、いわばダンジョンから貰える、本当のご褒美なんだよ」

「「「ご褒美?」」」

「モンスターを一匹ずつ狩っていってもレベルは上がる。それが、咲鐵さきがねとかの上位パーティーだ。対して、ダンジョンコアは――」

「分かった。ズルだ」


 指を鳴らし、得意げに答える朱音。


「残念、外れだ。言っただろ。ダンジョンコアは、ダンジョンから貰えるご褒美だって」

「……でもそれって、なんでダンジョンは自分を攻略されやすくするご褒美なんて渡すんだろ?」

「俺たちがウッドマンを倒した方法を覚えているか?」


 悠が出した疑問に答えると、3人は当時のことを思い出そうとしているのか、眉間にシワを寄せて考え込む。

 しかし、思い出しても答えとつながらないようで、みんな「うんうん」と唸るだけだった。


「俺たちはウッドマンにスライムをぶつけてたおしただろ? あれは、例えばHPヒットポイント100のウッドマンをHPヒットポイント10のスライム10匹に分散させて倒したんだ。ダンジョンコアはその逆で、コアでレベルを上げた冒険者にモンスターをたくさん倒させて魔力を上昇させる。そういった奴らやが仲間を連れて下層へ降りていき、倒れればダンジョンにとって美味しい餌となるって訳だ」


 上層部では、駆け出しの冒険者がよく死ぬ。

 その命――魔力はダンジョンがモンスターを生み出す糧となると同時に、コアを作り出すためのエネルギーとなる。


 ではなぜそんなことをするのかと言うと、下層ダンジョンはレベルが高いので、ただの人間の魔力ではさして栄養にならない。

 そこでダンジョンコアによって強制的にレベルを上げて、多くのモンスターを狩らせる。


 そして、魔力をさらに濃縮レベルアップさせ下層ダンジョンに挑戦させる。

 そして冒険者が倒れたらその階層の栄養となる。

 そういった理由でダンジョンコアというものが存在している――という仮説がある。


「えっ、怖っ……」

「まぁ、確かに怖くはある。あるんだけど、キラスタは別に攻略組じゃないだろ?」


 悠がおじけづいた声を上げるが、それでいい。

 俺たちは攻略組じゃないんだしな。


「俺たちが今までスライム狩ったり、ウッドマンを狩ったりした階層にも、まだダンジョンコアがあるはずだ」


 動画をアップロードしているパーティーやブログが残っているものに限るが、今までダンジョンコアの記述があったことはない。


「ダンジョンコアを見つけてレベルを上げれば、える動画が撮れるって寸法よ」

「「「それだ!!!」」」




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読んでいただき、ありがとうございます。

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