第六話 シャルロット、追撃

「覚悟なさ~~~いっ!」


 飛びかかるペルシャ猫クリス様。華麗にサマーソルトキックで対空迎撃して、艶やかに着地するポメラニアンカーチェ様

 ニャンコらしく空中回転で軟着陸を試みる猫の頭に、回転方向のカウンターでローキックを決め、追い打ちをかける鬼仕様。

 ビタンと壁に叩きつけられ(頭から行ったぞ……)て、ぐったりと伸びたペルシャ猫クリス様の生死を確かめ、舌打ちなさるポメラニアンカーチェ様。今日はどこからかボールペンを咥えて来て、俺に示しつつニャンコの下肢を広げる。


「ほらほら、女の子ですよ~」

「は~い」

「今日は猫を使って、女の子の敏感な所をお勉強しましょうね~」

「は~い」


 カーチェ様こと、銀河聖妃ぎんがせいきの座を争う四人の聖准聖妃せい じゅんせいきの一人、エカテリーナ・ヴィッチェーロ姫と、同じくクリス・トリタニア姫の死闘は、だんだん訳のわからぬものになっていた。

 ……まあ、ほぼカーチェ様の圧勝なのだが。

 カーチェ様の聖力が分離された輝石越しに見ると、猫も本来の姫様の姿に見えるわけで、いろいろ凄いものを観察させて頂いてるわけなのだ。

 なるほど~こうなってるのか~と、本来は高貴なお方のとんでもない部分を覗き込み、カーチェ様の指導の元、今日は敏感な核を突付いてみたりして。


「ぁあ…………ああんっ……そこぉ……もっとぉ……」

「気分を出してるんじゃありません、負け猫!」


 意識を取り戻したペルシャ猫クリス様の頭をサッカーボールキック!

 容赦のないカーチェ様は、山盛りされたカリカリのドッグフードのフード皿を咥えて、猫の前に押し出した。


「負け猫は、カリカリのドッグフードでも食べるのです。飢えるのは嫌でしょ? ……さあ、私達も夕食に致しましょう」


 固いペレット……それも、本来カーチェ様の健康のために買った犬用を、泣きながら咽び食うペルシャ猫クリス様

 それを横目で見ながら、鶏もも肉の唐揚げに舌鼓を打つポメラニアンカーチェ様

 天の川銀河の未来をかけた戦いが、こんな事で良いのだろうか?


「アレが、動物化された身体の戻し方を、白状しないからいけないのですよ」

「わ……私の輝石が見つかるまでは、道連れですわ!」


 睨み合う、犬と猫。まあ、面白いから良いけど。

 すっかり二匹の面白動物を飼う生活に、慣れてしまった自分が怖い。もっとも、猫は母屋ではなく、庭で野宿なのだが……。


「あ、そうだ。クリス様も、そろそろ風呂に入れてやろうか?」


 この世の終わりのような顔をしてから、がっくりと項垂れるペルシャ猫クリス様

 さすがに動物体では、自分で身体を洗うこともできないからね。

 洗い残しがないように、輝石で覗いてガシガシと。


「……眺めるだけじゃつまらない。せめて写真を撮りたいと思ってるよね?」

「おおよ! せっかくの美人姫が二人もいて、お風呂に入れてるのに……」

「知ってるぅ? 輝石を二つ重ねると、ちゃんと写真を撮れるんだよ?」

「マジかぁ? でも一個しか無いしなぁ……」

「じゃあ、はい。二つ目ぇ」


 ポチャンとお湯の中に何かが落ちる。拾い上げると、透明な輝石だ。

 ラッキー! 二つになったから、写真が撮れるぞ。って……俺はいったい誰と話していたのだろう?

 まあ、いいや。防水仕様のスマホを準備して待ってると、何も知らないカモもとい、ワンコがトコトコやって来た。

 手桶でバシャバシャお湯をかけてから、湯船に抱いて入れる。


「はぁ……生き返りますね……」


 可愛らしく溜息を吐いて、湯を堪能するポメラニアンカーチェ様。機嫌よく背泳ぎを始めた。

 シャッターチャンスと、二つになった輝石を重ねて、スマホで……カシャッ!


「おおっ! 本当に撮影できた! カーチェ様のお椀型のおっぱいも、薄い下の毛もバッチリと!」

「ね? 言った通りでしょ。これを銀河ネットに上げれば、あなたは神降臨だよぉ」


 いつの間にか肩に乗ってるシマリスと、うっかり意気投合してしまう。

 カーチェ様はいわゆる清純女子だから、聖准聖妃の中でもずば抜けてファンが多いからなぁ。そのカーチェ様のモザイク無しのフルヌード、まさに神画像……。


「その声はシャルロットね! やりたいのならやってみなさい。そんな事で、私のファンが減ると思ってるのですか!」


 あぁ……この幼児体型を知ったら、逆にカーチェ様ファンは増えそう。先日見た銀河ネットの掲示板のファン層を思うと、そんな気がしてならない。


「ヌードも辞さないって、肝が座ってきたわねぇ、カーチェも。でも、この写真の恥ずかしポイントはそこじゃないわ! スイーツの食べ過ぎな証拠の、このポッコリお腹よぉ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「可愛らしいお胸や、慎ましい秘所は晒せても、その不摂生の証。甘いものを食べ過ぎで肥えたポッコリお腹を、あなたはファンの目に晒せるかしらぁ?」

「くっ……卑怯者!」


 珍しくカーチェ様が追い込まれている。シマリスシャルロット様恐るべし!

 でも、銀河ネットの掲示板を見る限り、連中なら大喜びしそうな雰囲気だが? 【スイーツ食べ過ぎ、カーチェ様】とか【スイーツを献上して、カーチェ様のポッコリお腹を育てる会】とか、盛り上がりそうな気もするが……。


「それが嫌だと言ってるのです! 乙女心を理解して下さいませ!」

「じゃあ、湯上がりのプリンはやめておく?」

「それは明日を生きるための糧でしょう! あなたは何を言ってるのです!」


 乙女心って、難しいね……。

 ねえ? とシマリスと頷きあった瞬間、ポメラニアンカーチェ様が水面を蹴った。

 俺の肩に乗ったシマリスの肩に正面から飛び乗って、ウラカンラナで頭からお湯に叩き込む。更にブレンバスターの体勢で抱え上げたまま俺の膝に上がり、湯船の縁を目掛けて、必殺のデンジャラスクイーンボム!

 今は鬼嫁キャラで知られる北斗晶が、現役時代にアジャコングを沈めるために開発した危険度マックスの技は、難なくシマリスシャルロット様を、プカンと湯面に浮かばせる威力を示した。

 チョコチョコと犬かきで、接近したポメラニアンカーチェ様は、パカンとシマリスの下肢を広げて、今日一番のいい顔を見せる。


「ほらほら、新しい女の子ですよ~。今日はお写真も撮れますね~」


 シャルロッテ様は、可愛らしい小悪魔タイプの美少女。クルクルヘアの金髪と、ほっそりとした小柄な身体が魅力的。

 カーチェ様の未成熟な感じと違い、ツンと上を向いたおっぱいといい、ゴージャスな恥毛の具合といい、けっこう大人。聖准聖妃様だけに、開いてみると、やっぱり処女なのですけどね……。


「あ、その携帯は没収です。用が済んだら、返してあげますね」


 用ってなんだろうね?

 きっと銀河ネットに繋いで写真をアップロードした後に、自分の奴のデータは消すんだろうなぁ……。

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