第5話 タイムマシン

「花村君の話で、興味深い内容があるとすれば、、、」

教授の辛らつな言葉に花村は顔をしかめる。教授は気が付いていないのだろう、続ける。

「興味深い内容があるとすれば、それは、、、どうして人はそんな妄想をするんだろうか?ってことだろうな」

「意識下か無意識下か、その両方だろうけども」


教授は自問するように誰に言うかでもなく続ける。

「つまり、人はそれを望んでいるんだろうな。宇宙人がいてほしい、宇宙人がこの地球に来ていてほしいと」

「要するに宇宙人が存在し、地球に来ている。という前提、いわば願望の正当化の話をしているように思えるね」

「存在の可能性がいくら低くとも、いや、いてもおかしくないと。到底到達するとは思えんが、架空の技術を想定してみたりして何とか肯定する。そんな技術を宇宙人が持っていたとしてもおしくないじゃないかと」

「、、、都合が良すぎるだろうな」

ギャラリーはため息をつかんばかりの落胆ぶりである。教授は気が付いていないようだが。


「現実とは往々にして夢のないものなんですかね」

花村が皮肉めいた口調で言う。

「夢。かね?まあ何か都合のいい解釈をしない限り夢が成り立たないのであれば、そういうことになるかもしれんが。それは単なる幻想か妄想か、夢とは違うんではないかな?」


沈黙、そして重い空気がゼミを支配する。


「でも、、、」

暁美が口を開く。

「UFO、、、の目撃例は多くあります。その大半は何かの見間違い、自然現象などで説明が付くのかもしれませんが、ごく一部であれ何かわからないものは存在する。違いますか?」

教授はにっこりと笑いそのあとの発言を待つ。

「それは確かに何かわからない。ということになるんでしょう。でもそれは何か?願望でもなく都合のいい解釈でもなく、何か合理的な解釈としての、、、考察は出来るんではないでしょうか?、、、」

暁美は尻つぼみになりつつ言う。


「そうだな、、、合理的か解釈か。まあ何かわからない。というのが結論ではあるわけだが、その上で何か?というのを考察するとすると」

教授はゆっくりと歩きつつ考えながら話す。

「宇宙人説は合理性に欠けると思う、、、、ではタイムマシン説はどうだろうか?」

一同教授に目をやる。さすがに教授もこれには気が付き、一旦息をつく。


「宇宙人は、その存在もそして地球に到達しているのかも相当怪しいと思われる。でもタイムマシンなら、つまり未来人なら少なくともその存在はまず確実だ」

宇宙人よりはまだ合理性はあるんではないかな?」


「はは、そうですか」

花村は意外ですね。と言わんばかりである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鴨川ゼミの雑談 @blueOX

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ