第3話  ピエロ

「うーん……。じゃあ、白いアザレアの機嫌がいい時にまた来るよ。それと……良かったら君の名前をぼくに教えてくれないかい?」

「あの、お客様。このお花は本当にとても機嫌がいいのです。こんな時はもうないかも知れません。元々、このお花だけは気紛れなのですよ」


 彼女は芝居がかった物言いで、ぼくを引き止めた。

 なぜだろう? どうしてか、買った方がいいみたいな気持ちになってしまった。

 こんな気持ちになったのは、今まであっただろうか?


「じゃあ、買おうかな。その代わりしつこいようですまないけど、君の名前を教えてくれないかい?」

「お客様。このお花はモクレンといって、花言葉は威厳、忍耐、崇高、持続性、自然の愛ですのよ」

「……わかったよ。じゃあ、幾ら?」

「はい。毎度あり」


 ぼくは、上手くはぐらかされたみたいだ。

 それとも、彼女はただ商売上手なだけなのかも知れなかった。

 

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