第2話  モクレン

「不治の病で入院をしている姉に頼まれたんだ。その花瓶に差してある白いアザレアが欲しいんだけど」

「まあ、お客様! そのお花は今日はとても機嫌が悪いんです。良ければこちらのお花を絶対に後悔はさせませんよ」


 可愛らしい顔をした少女だった。背は低い方でぼくは上から彼女のくりくりとした瞳を覗いていた。いつもパタパタと落ち着きなく動き回っていそうな人だった。


 そんな彼女にぼくは恋をした。


「うーん……」


 このままじゃ言葉が途切れてしまう。

 

「じゃあ、白いアザレアの代わりに白い綺麗な花を」

「ですから、こちらのお花を」


 彼女が勧めているのは、全く違う色のモクレンだった。

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