4月
相談事は距離を縮ませる。まさにその言葉の通りで、それからしんたろうくんと私は二人で話すことが増えた。それを同時期くらいから、私はバス通勤をやめ、車通勤にした。
「るー今日も車?」
「そうだよ。しんたろうくんチャリ?」
「うん。腹減らね?ラーメン食べ行こうぜ。」
「大賛成!早く終わらせていこう。」
ラーメンを楽しみにその日のバイトを頑張った私たち。しかし深夜まで営業しているラーメン屋は臨時休業だった。
「ちょー腹減ってたのに、もう通り越してきたよ。」
「わかる。あー、でも悔しいね。」
「またリベンジしようよ。」
そんな約束をしながら、私たちは朝の5時まで喋っていた。半袖で過ごせるようになってきた季節の朝は早い。気づけば朝日は昇り始めていた。
それからというもの口に出して約束しなくても、ルーティンのようにシフトが被った後は朝日の時間まで一緒にいた。私はもう一つ掛け持ちでバイトをしていたため、もう一つのバイトに寝ずに出勤することもあった。そんなときは必ず彼から休憩時間に、
『今起きたあ。るーもう働いてるのかって尊敬』
と起きた報告がきていた。
お互い次の日が出勤の時は、
「また明日じゃなくて、12時間後ね。だね。おやすみ。」
という日も少なくなかった。
「るーちゃんって好きな人いるの?」
私とほぼ同期の一個上のななちゃんと話している時。そんなことを聞かれた。ななちゃんも最初は隠していたけど喫煙者で、それがお互いに分かった時からすぐに仲良くなったのだ。ちなみにななちゃんは高校の時から付き合っている彼氏がいて、未だにラブラブ。
「どうだろう。自分でもあんまり分かってないんだよね。」
「じゃあ気になっている人はいるんだ。」
「うーん、気になってるのかも。」
曖昧な答えを言った私だったけど、心の中ではしんたろうくんの顔がしっかりと浮かんでいた。ななちゃんも同じバイト先ということもあり、自分から言う気がなかっただけなのだ。それからななちゃんは今までのこと、彼氏のこと、自分の気持ちなど、様々なことを話してくれた。ななちゃんと恋愛の話を深くするのはこの時が初めてだった。そんなななちゃんを見ていると、
「私、しんたろうくんが気になるんだよね。」
自然と出てしまった言葉だった。私のしんたろうくんへの気になる気持ちも、気になるからこそバイト先の中でしんたろうくんの一番仲いい人になりたいという独占欲も、過ごしている大切な日々の話も。話し出すと止まらなかった。そのくらいしんたろうくんへの思いは増えていっていたのだ。
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