第14話

 ラミィはただ一人。

 彼女は本当にただ一人なのだ。


「……はぁ、はぁ、はぁ」

 

 この場において一人で僕ら全員に立ち向かうラミィは息を切らし、全身に再生しきれなかった傷を刻みながらそれでも力強い瞳でアスカをにらみつける。

 

 本来、ヴァンパイアには疲労という概念もなければ再生しきれないということもない。

 だがしかし、僕らダンピールはそこまで完璧ではないのだ。

 人間と比べたら遥かに少ないが疲労はあるし、再生能力だってほとんど無限のようなものであるが

 

 体組織の全てを失っても変わらず再生出来るヴァンパイアと違ってダンピールは体組織の全てを失えば変わらず戦えないし、再生にはあまりにも多くのエネルギーを消費する。


「……んっ、あぁぁぁ」

 

 ラミィが。

 純粋なヴァンパイアであればまた違ったであろう。


「これで終わりよ」


 だがしかし、現実はどこまでも非情だ。

 ラミィは今、地に膝をつき、倒れている……僕の回復魔法というバックアップを受けるアスカたち四人の前にラミィはその強さを発揮しきれなかったのだ。


「……ッ」

 

 アスカはラミィに聖剣を向けながらも力強い瞳を向け、殺意を見せる。


「……」

 

 だがしかし、だからと言ってラミィに出来るわけでもない。

 無情にもアスカは聖剣に力を込め、確実にラミィの命を奪い去るべく聖剣を掲げる。

 そんな中、これまで多くを語ってこなかった僕が口を開く。


「……アスカも、ラミィも強いよ。本当に兄として誇らしい」


 いきなり言葉を発した僕に対してその場にいた全員がこちらへと視線を向け、何事かと言ったような表情を浮かべる。




「でもさ。やっぱり兄としての威厳はもっておきたいよね」



 

 僕は自分の中で抑えていた膨大な力を開放する。


「僕はこれまでの人生の中で一度たりとも本気を出したことないのだよ」


「「「「「……ッ!?」」」」」

 

 圧倒的な力。

 この場に流れるありとあらゆる血の支配権を強引に自分のものとし、この場にたまっている過去のヴァンパイアたちの力をも支配。

 この場の圧倒的な支配者へと一瞬にして君臨した僕は自分の前にいる全員を地へと叩き落としたのだった。

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