第13話

 今、アスカたちが戦っているこの場は何もそこまで広いフィールドではない。

 どちらかと言うと狭いほうだ。

 

「血よッ!荒れ狂えッ!!!!!!!」


「無駄です『絶対零度コキュートス』」

 

 アスカ、ミリア様、カミア様、サレリア様。

 四人の強者に囲まれるラミィが大量の血を展開し、四人を吹き飛ばそうと荒れ狂わせる。

 しかし、その血はミリア様の魔法によって凍結される。


「……ッ!」


「叩き潰せ『喇叭黙示録天命雷光ラッパ吹き』」


「美しく散りなさい『木花之佐久夜毘売始り齎し桃の光


「聖剣エクスカリバーッ!!!」

 

 血を凍結されたラミィを狙ってカミア様の雷鳴が、サレリア様より光線が、アスカの最高の一振りが。

 彼女を襲う。


「……無駄ッ!!!」

 

 それらの攻撃をもろに受け、大きく体を損傷させながらもラミィは空気中に散布する目に見えないほど小さな血を震わせ、徐々にこの場の気温を上昇させながら体を震わせる。


「この……程度ッ!!!」

 

 ここはヴァンパイアの墓であり、今なお残る亡きヴァンパイアの残滓が滞留する場。

 ここは僕らにとって最大限力を発揮できる場である。

 ラミィは四人を前にしても臆することなく、ミリア様の凍結魔法にも負けることなく血を荒ぶらせ、暴れまわる。


「……くっ」

 

 体をボロボロに崩しながら発動させるラミィの膨大な量を操っての鮮血による攻撃はアスカたち四人にとっても脅威である。

 ラミィを中心として吹き荒れる竜巻のような鮮血の風は防御態勢を取る。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 アスカたち四人は回復魔法を使えないし、ダンピールのような再生能力もない。

 ラミィの攻撃による出血の強要は四人にとってもかなり痛手である。


「……」

 

 ラミィが鮮血の竜巻を収める頃には彼女の肉体の再生はほとんど回復しており、アスカの聖剣エクスカリバーをかすめた左腕以外は完全に再生している。


「お前ら人間風情が私に勝てると思うなよ」

 

 持久戦となれば回復が可能であるラミィの方が有利。

 ラミィは長い事件をかけての持久戦に持ち込む気満々であった。

 だがしかし、ラミィの思惑はうまくいかないだろう。


「彼の者を癒せ『エリアハイヒール』」

 

 アスカたち四人は回復魔法を使えない。

 しかし、僕は回復魔法を問題なく使用できるのだ。


「……ッ!お兄ちゃんッ!!!」

 

 アスカたち四人を回復させた僕に対して信じられないようなものを見るような目でこちらを見てくるラミィ。


「悪いが……僕はアスカたちの味方だよ?」


 そんな彼女に対して僕は首を振って答える。

 

「……ァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!お兄ちゃんッ!!!」

 

 ラミィが激情に任せて僕に向かって血の閃光を放つが、それはアスカによって防がれる。


「お任せください……お兄様。必ず倒してみますから」

 

 僕の回復魔法で全回復したアスカは聖剣を構え、ラミィと向かい合うのであった。

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