第12話
僕やミリア様たちを蚊帳の外に追いやって激しくぶつかり合うアスカとラミィ。
「ぬるいわねッ……ぬるい、ぬるい、ぬるいわッ!」
荒れ狂う血の嵐。
振るわれる世界を揺るがすあまりにも巨大で、膨大で、圧倒的な血の暴力。
かつて、人類を恐怖のどん底へと叩き落としたヴァンパイアとしての圧倒的な力が世界の記憶として刻みこまれる。
「……くッ!」
ゲームの主人公も使う聖剣を持ち、格別した才覚でもって圧倒的な力を持ち、世界でも有数の実力者であるアスカに勝てる者などほとんどいないだろう。
「遅いわッ!」
だがしかし、相手が悪かった。
相手は物語の黒幕であり、ラスボスとして君臨するはずであった僕の代わりに裏社会を支配したダンピールたるラミィ。
今、アスカの敵として立ちふさがっている相手であるラミィは並みの相手ではまるでなかった。
彼女もまた、個人で世界の勢力図を塗り替える世界有数の実力者なのである。
「何かも足りないわ……才能に振り回されているだけ。全然脅威にもならないわ」
血を操り、変幻自在な戦いを繰り広げてくる戦闘経験豊富なラミィを相手にアスカは翻弄され、劣勢を強いられていた。
結局のところアスカは最近体が強くなったばかりであり、まともな戦闘経験がほとんどない。
才覚だけでどうにかしてきた経緯があるが、同じく格別した才覚を持つラミィには苦戦を強いられる他なかった。
「聖剣、エクスカリバーッ!!!」
破れかぶれの状態で放たれるノータイムで放つことの出来る便利で強力なアスカの必殺技たる『聖剣エクスカリバー』。
「こんなもの当たらないわよ?」
万物を破壊し、基本的には不死であるヴァンパイアにさえもダメージを与えるアスカ最大の攻撃をラミィはいとも容易に回避し、背後からの奇襲を仕掛ける。
「……んんっ!」
剣と剣を至近距離でぶつけあうラミィとアスカ。
だがしかし、ここでもアスカは劣勢であった。
「……はぁ、はぁ、はぁ」
なんとかラミィから距離を置くことに成功したアスカは息を切らしながら剣を構える。
「……」
それに対してラミィも一切の油断なく見据え、今すぐにでも殺そうとアスカの隙を伺う。
「手助けに行ってまいります!ロマルスはここで待っていてください!」
「我も行ってくる!ここで行かぬなどありえぬからな!彼奴らだけを目立たせるつもりはない!」
「私も行ってくるわ!」
「……いってらっしゃい」
そんな状況を見かねてミリア様たち三人がアスカの援護をするため、戦線へと参加する……あの三人であれば足手まといになることはないだろう。
これで観客席には僕一人。
「……」
僕は静かに目の前で起こる戦闘を、僕の愛する者同士が行う本気の殺し合いを眺めているのだった。
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