最終話
自分の方へと伸ばされたラミィの手を僕はつかみ取る。
「お兄ちゃん……?」
「ふっ」
そして、僕はこの地から足を離し、ラミィと共にゆっくりと落ちていく。
「「「「……ッ!?」」」」
当然、身投げする僕に対して驚愕の表情を浮かべるアスカたち四人。
「お別れだよ。四人とも。みんな、ありがとう。誰が一番とかないけど、みんな大好きだったよ。こんな僕と一緒にいてくれてありがとう」
自分の力で宙へと浮かばせていたそんな四人を方へと視線を送り、お別れ遥か遠くへとぶっ飛ばす。
「お兄さ───ッ!!!!!」
再びここに彼女たちが上陸することはないだろう。
ヴァンパイアに連なる者以外は入れないのだ、ここには。
四人がここの影響下の外へと出て、それからも更に距離を伸ばし、自分が充分だと思ったタイミングで四人たちを僕の影響下から外す。
まだ告白の答えも出していない、選んでも居ない。
数多の約束も果たしていない……されども、将来のことを考えればこれで良かっただろう。
ヴァンパイアに連なる者など、この世にいる必要はないのだ。
「……」
僕は四人の方から意識を自分と共に落ちるラミィの方へと向ける。
「な、なんで……」
共に落ち行く中、ラミィは呆然と疑問の声を上げる。
「ラミィの復讐。何もかもをすべて破壊するなんて認められない。味方をしてあげられない。強引にでも止めて見せる……あぁ、でも一人にはしないよ」
僕はそっとラミィを抱き寄せながら彼女の疑問に対して答える。
「……お兄、ちゃん」
そんな僕に対してラミィもまた、弱弱しい力なれども僕のことを抱きしめ返してくる。
「ごめんね。味方できなくて……それでも、一人にはさせない。させたくない。こんな、どうしようもなく優柔不断なお兄ちゃんでごめんね」
「う、ううん……もう、良いの……もういいや。一人じゃ、ないのなら……お兄ちゃんと一緒なら……」
懺悔のこもった僕の言葉をラミィは否定し、涙を流しながら僕のことを力強く抱きしめる。
「……ラミィ」
すべてを飲み込み、底へと沈める真っ赤な湖が近づいてくる。
「あぁ、お兄ちゃん。ずっと、会いたかった。大好きだよぉ、お兄ちゃん」
音が跳ね、水飛沫が跳ねる。
「あぁ。僕も大好きだよ、ラミィ……これからはずっと一緒だ」
かつて多くのヴァンパイアが身投げした崖の下。
今や赤き湖となった場所へと僕とラミィは静かに落ちる。
「「……っ」」
僕とラミィは赤き湖の奥深くまで、ゆっくりと沈んでいく……どこまでも、兄妹二人で。
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