第10話

 アル・レテンも世界に存在する国家も。

 すべては蚊帳の外。

 結局のところ、圧倒的な力が世界を制するこの世界においては集団よりも個人の方が重要だ。

 どれだけ数が異様ともただ一人の個に滅ぼされるのがこの世界の理なのだ。

 圧倒的な個の力の前にはどんな大国であっても何の意味もなさない。


「な、何か不思議な場所ね、ここは」


 今、この世界で三つの指に入る強さを持った者。

 それは僕とラミィ……そして、アスカだ。


 実際のゲームにおいては物語の黒幕として登場し、現在の社会構造を変えるべく暗躍していた最強の種族たるヴァンパイアの血を引くダンピールたる僕。

 そんな僕の実の妹であり、同じ最強のヴァンパイアの血を引くダンピールであり、現在、世界に混乱を齎した元凶であるラミィ。

 勇者としての力を持ち、そのスペックの何もかもがチート性能であり、ただのバグとしか言えないような人類最強、アスカ、

 

 この三人に敵う存在は今現在には存在していない。

 僕の家族は圧倒的につよつよであった。


「それで?こんなところに何をしに来たの?」


「んー、ここはちょっとだけ特殊な場所でね」

 

 アスカ、ミリア様、カミア様、サレリア様の四人と共に僕はとある場所へとやってきていた。


「特殊?」


「そう。ここはね……僕たちダンピールというよりヴァンパイアにとって特別な場所なんだ」

 

「特殊な場所であることは一目瞭然だけどね」

 

 僕の言葉に対してミリア様は苦笑交じりに口を開き、そう話す。


「実に素晴らしいところであるな!なんでこんな目立つものが無名であったのだ?」


「確かにそうね……空に浮かぶ大地なんてもっと話題になってもよさそうだけど」


 僕がやってきたこの場所は何もかもが特殊であった。

 この世界には本来存在しない色鮮やかな花が咲き誇るこの小さな島サイズでしかないこの大地は空に浮かび上がっており、四方は滝に囲まれ、この大地の下には真っ赤な水の湖が広がっている。


「まぁ、ここは僕らヴァンパイアの力を持つ者にとって特殊な場所だからね……普通の人が知らないのも当然だと思うよ」


 ここは数多くのヴァンパイアの墓であるのだ。

 他にないだろう……この場こそが僕の全てに決着をつける場所に最もふさわしき場だ。


「……ふふふ。やっほー。お兄ちゃん。やっぱり来てくれたね」


 この場に響く新たな声。

 必ず来ると踏んでいた人物の声がこの場に響く。


「ふっ。僕らの墓などここしかないであろう?」

 

 僕は新しく響いた声の持ち主であるラミィの方へと視線を送った。

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