第8話

 僕とアスカの二人でダラダラと過ごしていたログハウス。

 そこへとミリア様たち三人が攻め込んできた。


「……私たちもそろそろ動き出そうと思っていたところです。そうですよね?お兄様」

 

 突如として現れ、玄関の前に立つ三人たちを僕と共に玄関で迎えるアスカは少しばかり表情を歪ませながら口を開く。


「ん?まぁ、そうだね」

 

 僕はそんなアスカの言葉に頷く。

 もうそろそろ別の場所に移って真面目に働くかと健闘していた時期であったことには変わらない。

 嘘は言っていないと言えるだろう……まぁ、検討しただけとなっていた可能性が非常に高いが。


「動くのであればもう少し早く動いて欲しかったけどね?」

 

 そんなアスカへとミリア様より嫌味をチクリ。


「私たち二人はスラム出身ですから……一般市民との戦闘には忌避感があるのですよ。平然と一般市民から搾取、その何もかもを奪って豪勢で贅沢三昧な生活を続けるお貴族様とは違いまして」


 それに対してアスカも応戦する。


「そんなに贅沢三昧しているわけじゃないわよ」


「ふっ。そんなにきれいな服で身を包み、自分の体を清潔に保つために毎日ゆったりとしたお風呂に入り、健康的に三食食べて贅沢ではないなど……お貴族様はやはり素晴らしいですね。明日食べるものにも困り、地面を這いずりまわるねずみを見つけては明日も生きれると歓声を上げていたあの頃の私たちの姿を見せてあげたいですね」


「ストップだよ。アスカ……流石に飛ばし過ぎ、ミリア様もそこまでにしてくれるとありがたいです。申し訳ないですが、こと。この話になるとミリア様も分が悪いでしょうし」


 僕は徐々にヒートアップしていくアスカとミリア様の言い争いを止める。……女の争いが怖いんだけど。


「うぅ……ごめんなさい」


「……私も、軽率だったわよ。ごめんなさい」


「頼むから僕を巡って争い合わないでね?」

 

「あぁ、まったくもってその通りだ。ド派手にやらかすのは良いが、口論でみみっちくやり合っても自らの醜さを露呈させるだけだとも?」


「えぇ、そうよね。女の醜い言い争いなんて美しくないわ」

  

「お二人も私のお兄様にこっそり告白していらしましたけどね?」


「えぇ。そうですね……以前、ロマルスの件で私が相談したことなど忘れたかのような裏切り劇に私はショックを受けましたよ?」

 

 僕の援護射撃を行ったカミア様とサレリア様を何食わぬ顔でアスカとミリア様が刺していく。


「……とりあえず、部屋の中に入ってよ」

 

 再びギスりだす中、僕はとりあえず三人を部屋の中に上げることにするのだった。

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