第18話

 ラミィの存在。

 ミリア様からの告白。

 アスカからの提案。

 カミア様からの提案。


「……何の用でしょうか?」

 

 既に死に体となっている僕は放課後。

 王都にある自宅へと僕を招いたサレリア様へと視線を向け、疑問の言葉を口にする。

 もはやサレリア様からも告白されるんじゃないかと疑っているよ?僕は。


「……私の妹を、私の妹に病をかけたのは貴方の妹ってことで良いのかしら?」

 

 そんなことを考えている僕の言葉に対して、サレリア様は紅茶を飲み、視線を少しばかり僕から逸らしながら口を開く。


「……そうなるでしょう」

 

 サレリア様の言葉を受け、僕は姿勢を正し、告白されるかも?なんて考えていた自分を心の中でフルボッコにしながら彼女の言葉に頷く。

 

「……そう。なら、私は貴方の妹を許す気などない。殺すわ」

 

 サレリア様は僕に対して確固たる意思のこもった言葉でそう宣言する。


「……っ」


「構わないわね?」


「当然です。その権利が、サレリア様にはございますから」

 

 僕はサレリア様の言葉に頷き、それを肯定する。

 それに対して、サレリア様は少しばかり表情を歪め、少しばかりの沈黙を作りながらも再度口を開く。


「……はぁー、嫌ねぇ。復讐など美しくない……妹もロマルスのおかげで回復した。それでも、私は自分の心を止められそうにないの……本当に、美しくない。自分で自分が嫌になるわ」


「いえ、そもそもとして我らヴァンパイアに連ならぬ者は当の昔に滅ぼされる種族であり、この世界の癌なのです。サレリア様が僕の妹を殺すのは復讐を抜きにしても正しき行いにございます」


「……自分を卑下することはないわ」


「ただの事実です」


「……ごめんなさい」


「サレリア様が謝られることなんて何もありません」

 

 僕はこれ以上ないほどに表情を歪まながらサレリア様の謝罪の言葉を否定する。


「……ありがと、時間を取ってくれて」


 サレリア様はゆっくりと立ち上がり、僕から視線を外す。


「いつまでも居て構わないわ。好きに過ごしてて頂戴。私は……そうね。色々とすることがあるからここらで失礼させてもらうわ」


「了解いたしました」

 

 サレリア様は再度僕の方に視線を合わせることもなく、僕らのいる部屋の扉へ向かってそれを空ける。


「あぁ、そう……ちなみにだけど私もロマルスが好きよ。だから……いや、ないわよね……そうね。どうしようもなく卑怯で美しくない私の力が必要になったとき、いつでも頼りなさい。女は好きな男の頼みは断れないものだから」


「はひ?」

 

 最後の最後で告げられたサレリア様からの言葉。

 それを受けて僕はピタリと固まったのだった。

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