第17話

 リリシアといつも通りの学園生活を送っていた。

 そんな僕はお昼の時間、カミア様に呼ばれて二人で人気のない空き教室でカミア様の使用人が作りすぎたというお弁当を食べていた。


「どうだ?味は……うまい、だろうか?」

 

 お弁当を食べる僕に対してカミア様がおずおずと疑問の声を上げる。


「えぇ。実に美味しいですよ。どれも本当に美味しいです」


「うむッ!そうか……そうか。ふふっ。であるのならばよかった……あっ、我の使用人が喜ぶ!」


「えぇ、ぜひともお礼を言っておいてください」

 

 なんで使用人が作った料理を褒められてこんな喜んでいるんだ?

 そんなことを考えながらも僕はカミア様の言葉に返答する。

 

「うむ」

 

 僕の言葉にカミア様がご満悦と言ったような表情で僕の言葉に頷く。


「……それ、でなのだがな」

 

 お弁当を平らげ、片づけを終えたタイミングで。

 カミア様がおずおずと口を開く。


「ミリアとの婚約はいかがするつもりだ?」


「……どう、しましょうね……アスカのこともありますし、自分の気持ちのことも」


「どこまで……どこまで行ってもロマルスは誰かを傷つけることを嫌う善人であり、心優しき人物であるからね」


「別にそんなことは」


「ある。だからこそ、そう簡単に結論は出さぬであろう。この問題にロマルスは……その決断はミリアかアスカか……そのどちらかを傷つけ、ゆえにえらべぬ」

 

 僕の言葉を否定するカミア様は自分の論で僕がミリア様の言葉の返事を出せぬ理由を語る。


「好き」


 そして、続く彼女の言葉。

 突然で突拍子もなく……脈略のない言葉。


「……私もロマルスのこと好きだよ」


 カミア様の口から、可愛らしい声が漏れ出してくる。


「……え?」


 何を言われたのだろうか?今、僕は……え?誰が、何を。は?


「ロマルスはいつも輝いていて……いや、違うな」

 

 自分で続けた言葉を……自分自身を殴りつけるという奇行で止めるカミア様。

 

「忘れてくれ」 


 そんな彼女は僕に背を向けて立ち上がり、いつもと変わらぬ様子で僕に忘れろと声をかけてくる。


「……はい?」


「優しいロマルスの心理を利用し、決断を下せぬように圧をかけるなど……我らしくもない手であった。こんなの目立たぬ。実に下らぬ、女々しい戯言だ……すまなかったな。我の下らぬ戯言で時間を取らせてしまって。我はここらで失礼する」


 さっきの告白を撤回し、僕の元から足早に立ち去っていくカミア様。


「もう遅いよ、ばかぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」

 

 颯爽とした姿で僕の元から去っていくカミア様を見送った僕は崩れ落ち、大きな慟哭をあげるのだった。

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