第13話

 ミリア様の真っ直ぐな愛の告白。


「……ちょ、ちょっと返事は待ってもらってもいいですか?」

 

 それを前にして僕はそんな優柔不断な返答を返すことしか出来なかった。

 もう、僕の頭は既にパンク状態なのだ。こんな状況で更にこんなことを言われたら僕の頭は穴どころか爆破だ。


「自分は恋愛のことなんて考えたことなかったですし、そもそもヴァンパイアの血も残す気ありませんでしたから。それに、ミリア様は殿上人であられますから。そもそも恋愛対象として見たこともないのです」


「……えぇ、わかっています」

 

 僕の言葉にミリア様が当然だとでも言いたげに頷く。


「それに、実際に婚約するとなると様々な問題もあるでしょう。ですから、少し、答えを出す前に猶予が欲しいのです」


「わかっているわ。貴方からの返事を私はいつまでも待つわ……それが良い返事であろうとも悪い返事であろうとも。いつまでも」


 優柔不断で逃げとも言えるような答えを出した僕に対してミリア様は真っ直ぐこちらへと視線を向けながらそう告げる。


「ありがとうございます……そして、優柔不断で締まらない答えを出してしまいすみません。」

 

 そんなミリア様の真っ直ぐな視線に耐え切れなかった僕はそっと視線を逸らしながら彼女へと口を開く。


「いやいや!急に私がこんな話を振ったのが悪いしね」


 ミリア様は僕の言葉を否定する。


「混乱して当然だし、時間を欲しても当然よ。一週間でも、一か月でも、一年でも……いくらでも待つわ。急がなくても良いわ」


 そして、ミリア様はどこまでも僕を受け入れる態度を見せる。


「……ありがとうございます」


 そう言ってくれるのは本当にありがたい。

 僕はもう結構ギリギリなのだ。

 出来るだけ急いで返しますね!とすらも言えない。


「……」


 一度、僕たちのやり取りが終わった後、この場に沈黙が降りる。

 僕とミリア様のやり取りをすぐそばで聞いていたアスカたちみんなは俯き、何も言葉を発さない。


「あ、あっ!とりあえず自分は皆さんに紅茶でも汲んできますね」

 

 なんとなく気まずい空気が流れる中。

 僕はいそいそとその場から逃げるように二階のキッチンへと向かったのだった。

 ……ぼ、僕にはあの雰囲気が耐えられなかった!!!弱い僕を許してくれ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る