第12話

 ミリア様の口から飛び出してきた衝撃の言葉が飛び出して。

 僕を含め、その場にいる全員が騒然となる。


「私はロマルスが好きよ」


 だが、そんな中でもミリア様は決して止まらない。

 止まることなく口を開き続ける。


「あの日、私の人生のすべてが変わったあの日。ロマルスは私の世界を救い出し、私の世界に色を与えてくれた。ロマルスは、私の全てとも言えるの」


 ミリア様は一切揺らぐことなくただ真っ直ぐに僕への気持ちを綴ってくる。


「ロマルスのおかげで広がった世界。ロマルスのおかげで色づいた私の世界。私はロマルスに返し切れない恩を貰い、そして憧れと恋慕を抱いた……どうしようもなく好き……私はずっと、好きだった。ロマルス事のことが」

 

 その言葉はとどまることを知らず、すらすらと続く言葉が述べられる。

 どこまでも真っ直ぐで、どこまでも直球な愛の言葉が。


「でも、それは生涯隠しているつもりだった。だって、王女である私が、平民であるロマルスと婚約したいだなんてロマルスに言えば困っちゃうだろうし、実際出来たとしても問題だらけになるはず……あぁ、でも。今のロマルスの状況は違う。今やロマルスの存在は平民とは思えないほどに大きく、また敵も多い」


 確かに、僕の立場は確かに日々目まぐるしく変わっている。

 既に僕をただの平民とみなしている人間はいないだろう。

 今や世界でも一大問題となっているアル・レテンのクーデターの首謀者であるダンピールたるラミィの実の兄である僕は最悪の敵にも、ラミィに対抗するための最高の切り札にも成り得る。


「私との婚約は、様々な問題を生むと思う。でも、それよりも多くの問題が片付き、ロマルスの身を守ることが出来る」


 そんな僕に王女という後ろ盾がつくのは最良のことであるともいえるかもしれない。


「ロマルスが苦難な立場に陥り、その弱みに付け込むような形でしかこんなことを言えない私を、もし……許してくれるのなら」

 

 ミリア様は一度言葉を切り、視線を下げた後。

 真っ直ぐに僕の視線を見つめながら再び口を開く。


「私はロマルスのことが好きです。良ければ、私と婚約してくれませんか?」


 これ以上ないほど率直で完璧な、真っ直ぐな愛を込めての告白。


「ちょ……は、え?」

 

 それに対して僕はただ困惑し、顔を赤くしながら狼狽することしか出来なかった。

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