第8話
実に様々なことが起こった……そう、本当に色々なことが。
ミレイユの死に伴って起きたアル・レテンの大改革に、学園の襲撃時に最大の友であるといえるアレマとの再会に。
そして、既に亡くなっていたと思われていた自分の実の妹。
ラミィとの、再会。
「……ふぅー」
冷たい石の床に壁、天井。
鉄格子から見えるお月様を眺めながら僕は深々とため息をつく。
「……ほん、とうに」
あれだけ恨んでいた、あれだけ……あれだけ……ッ!!!!!
僕は自身の森を人類に焼かれて自分の何もかもを失い、人類への深い憎悪と家族や友を失った悲しみに打ちひしがれて慟哭を上げたあの日。
そんなあの日に失ったと思っていた己の最愛の妹が生きていた。
ラミィが生きていた。
たった一人……あぁ、それでも確かに僕の妹は生きていたのだ。
ゲームでは確かに亡くなっていた彼女が。
「僕、はぁ……」
僕の行動のおかげでラミィが生きていた……いや、せいでと言えるところもあるのかもしれない。
きっと、彼女にも多くの苦労があっただろう。
幸か不幸かラミィも僕と同様にあの地獄から生き延び、ここまで生きてきたのだ。
「……おかあ、さん」
僕は何を、選べばいいんだろうか?
何もかもを失って、何もかもに絶望し、復讐すら果たせなかった己に疲れ果て、すべてがどうでも良くなっていた僕を拾ってくれたお義母さん。
そして、その娘であり、あの人に託されたアスカ。
僕は何があろうともアスカを守り、自分の人生がすべてをアスカに注ぐと決めて、いたはずなのだ。
あぁ、でも……僕は決して、あの日自分の何もかもを失っていたわけではなかった。妹だけは残っていたのだ。
だが、そんな妹との道は既に分かれている。
「……」
どうすればいい?
「……」
何を為せばいい?
「……」
何を、選べばいい?
「……ッ、それを」
それを選べるほど、僕は強くない。
僕は、何も成長出来ていないのだから……それを選べるほどに僕が強かったらこんなところになどいない。
「はぁ、クソったれが」
元アル・レテンの構成員で、今回の一件の黒幕であったラミィと実の兄妹であり、ラミィを捕らえたタイミングで殺さずに解放したことを理由としアル・レテンのスパイ容疑をかけられた僕はそのまま学園のごたごたが片付かぬ状態のままに騎士へと捕えられて連行。
牢屋の中へとぶち込まれた僕は何も決めることの出来ない自分に心底嫌気がさしながら、僕は自分の状況が変わるのをただ何もせずに待っているのだった。
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