第7話

  荒れ狂う鮮血に。


「アッハッハッハッハッ!!!」

 

 どこまでも響き渡る実に楽しそうなラミィの笑い声。


「……」


 それを前にする僕はただなすがままに流され、翻弄され続ける。

 どれだけ体が切り刻まれ、シェイクされようとも僕は問題なく再生し続けられる。

 なすがままにされていても問題はない。


「……ちょっと、迂闊だよ?」

 

 いや、むしろなすがままにされていた方が得だと言える。


「……ッ!?」

 

 ラミィが僕のことを景気良くフルボッコにしてくれたおかげで辺りにまき散らすことが出来た自身の血。

 それらを僕は操作し、ラミィの身を覆うようにして血の檻を展開。

 彼女をその中へと閉じ込める。


「対ダンピール戦をやるなら……一気に終わらせないと」

 

 僕の血も、ラミィの血も、そのすべてを一気に支配化へと置いた僕は体の全てを再生し、血の檻に投獄されたラミィへと視線を送る。

 ラミィが口を開き、何かを話しているのかはわかっているが、その声がこちらへと届くことはない。

 

 何故なら僕の血の檻はただの檻ではない。

 空間ごと隔離する技なのだ。

 檻の中でどれだけ喋ろうともこっちには届かない。


「さて、このままラミィをお国の方に突き付けたいところなんだが……流石に無理っぽいかも?」

 

 僕は視線をラミィから自身を囲む大量のアル・レテンの戦闘員へと移す。

 捕まった自分たちのトップを助けるべく、援軍へと駆けつけてきた彼らへと。


「……ッ」


「……っごく」


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 僕からの視線を受け、ざわめき、腰が引け始めるアル・レテンの構成員たち

 その数はパッと見た感じでも百を優に超えている。

 常人であればこれだけの数の敵に囲まれれば何も出来ずにただ一方的にやられるだけであろう。


「さっさと退け」

 

 そんな彼らを前にする僕は一体いつやられていたのか、いつの間にか気を失って地面に伸びていたアレマと僕の精神干渉魔法を受けてその意識を闇へと落としたラミィを戦闘員たちの方に投げる。


「ここで僕とのガチ戦闘はしたくないだろう?」


「……」

 

 手元で剣を回しながらの僕の発言を受け、ラミィとアレマを受け取ったアル・レテンの構成員たちは続々と引いていく。

 

 ここで僕と全力でやり合っても損しかないどころか全滅の危険が高いし、逃げるのは当然の判断だろう。 

 それに、そろそろ学園の方に完全武装の貴族家の当主たちが援軍としてやってくるだろうし。


「ふぅー」


 引いていくアル・レテンの構成員たちを見送った僕は深々とため息を漏らす。


「……僕は、どうすればいいんだろうね?」

 

 自分の妹であり、そして今回の事件を起こした組織、アル・レテンの頂点へとミレイユを殺して至ったダンピールの少女ラミィ。

 原作におけるロマルスのような動きを見せるラミィを前に、僕はこれからどう動けば良いんだろうか?

 僕はしばらくの間そこに立ち尽くすのであった。

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