第2話
この世界において、圧倒的な力を持っているのは王侯貴族並びに大商会の商会長など、本当にごく一部の人間だけであり、底辺層は何の力も持たず、交渉の席に立つ資格すらない。
そんな中、唯一アル・レテンの構成員だけは底辺層であっても貴族と戦えるだけの強さを持っている。
もし、この世界の構造を変えられる人間、組織がいるとするのならばそれはおそらくアル・レテンだけである……だからこそ、世界の上流階級はアル・レテンを暴走させないため、ありとあらゆる制約を課し、首輪をつけている。
その首輪の筆頭がその統領であったミレイユである。
「……ミレイユの奴が?」
ミレイユが敗北した。
その事実を僕は未だ受け入れらずにいた。
あの何があろうとも飄々とした態度を崩さないクソ狸が敗北する姿など……僕には想像できない。
「っぽいよ?でなければこんな事態も起こらないでしょう……おそらく、相当な実力者がアル・レテンで起きたクーデターの裏にいるみたいね」
「……」
ゲーム内では。
ロマルスがミレイユを嵌め殺し、アル・レテンの権力を完全に掌握し、自分の望む世界を作り上げるため暗躍している。
だが、この世界で僕はそんなことしていない……この世界に、底辺に、ロマルスのような真似が出来る奴がいるのか?
ミレイユを殺し、王侯貴族に気づかれぬように首輪を噛みちぎり、世界に宣戦布告するような奴が。
「私としてはまず真っ先に君を疑ったんだけどね?」
「すべてをかなぐり捨てれば出来るが……そんな馬鹿な真似はしない。んな、馬鹿出来るなら僕はこんなところにいない」
「まぁ、そうね……貴方の村を焼き払った貴族を許しちゃうような子だものね?」
「許しちゃいないよ……ただ、彼の命は僕らヴァンパイアの命よりも遥かに価値があったというだけ」
「……ふぅー。さて、私としては学園長としてこの学園を守る必要がある……本来、未熟な生徒を守るべき教師は奇襲を前に困惑し、次々と敗北している。実戦慣れしている君の力を借りたいのだけど?」
「協力するに決まっているじゃんか、というか協力しないと僕の立場がヤバい」
「ふふっ。その返事が聞けて良かったわ……それじゃあ行くとするかのぅ」
美しいハイエルフの姿から老婆の姿へと。
その身を変貌させた学園長は自分たちを囲んでいた不可視の結界を解いたのだった。
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