第三章
第1話
盛大に炎上し、黒煙を巻き上げる学園。
人々の中に混乱と恐怖が広がり、恐怖の声が上がる共に戦闘音が鳴り響く最中。
「……間違いない」
大慌てでミリア様たちと共に学園の方へとやってきた僕は学園内で大暴れしているアル・レテンの構成員たちを見て眉を顰める。
彼らの着ている服も、使っている武器も、戦闘方法も、まさにアル・レテンの構成員そのものであり、決して僕の間違いではないだろう。
「ど、どういう状況、で?」
困惑しているミリア様たちの横で僕は焦燥感で内心頭を抱える……なんで、なんで僕の古巣がこんな大暴れするんだよ!
今までずっと大人しかったじゃんか!ど、どうして急に方針転換なんか!
「ミリア様。アスカを頼みます」
現状に対して焦燥感を抱く僕は眉を顰めながらミリア様へとアスカの安否をお願いする。
「え……?」
一緒に来たアスカであるが……彼女はもう強いし、ミリア様たちもいるのだから問題はないだろう。
たとえ今、ここで僕が離れたとしても。
「流石にこの状況を無視するわけにはいきませんので、少々別行動させてもらいます」
「あっ!ちょっと待って!」
僕は自分を制止するミリア様の声を無視して行動を始めるのであった……ここで、僕が動かないとマズい。
国王陛下とのやり取りを思い出す焦燥感を抱く僕は慌てて行動を開始するのだった。
■■■■■
ミリア様たちから離れて行動する僕が目指すのはこの学園のトップであるカグラ・フォーエンスである。
この現状を正しく理解出来ている人間がいるとするのであれば、彼女を他に除いていないだろう。
「見つけた」
燃え盛る学園の中を走り回り、ようやく学園長を見つけた僕は彼女の周りに集まっていた有象無象を蹴散らし、彼女の前へと立つ。
「おぉ……ロマルス」
「状況を教えて頂けますか……?何故、アル・レテンが?」
「君にも知らないことがあるんだねぇ」
いつの間にか老婆の姿から若く、美しい本来の姿で立っている学園長は僕を揶揄うような口ぶりで口を開く。
「……」
「まぁ、そう睨まないでよ。もはやこうして私の素をさらけ出せるのは同じ長命種である君の前だけになっちゃったんだから……これくらいの戯れくらい良いだろう?」
「うるさい。僕はしっかり人として死ぬので問題なく」
「……死ねるかい?君は」
「……ちっ」
学園長の言葉に対して僕は舌打ちだけを返し、ただただ睨みつける。
「君も難儀だね……いや、ヴァンパイアを難儀と評するほうが良いのかね?」
「別に僕が難儀なだけだよ……現にヴァンパイアに連なる者なんて僕しか残っていないからね。つうか、僕についての話なんてどうでも良いんだよ。僕が聞きたいのは一つだけ。なんでこんなことになっているのか、だよ。なんでアル・レテンの連中が今になってこんな強硬を?」
「それなら別にそんな難しい話じゃないさ。ミレイユが死んだ。いわゆるクーデターって奴かな?人間らしい生活を求める底辺層が反旗を翻した……ただそれだけだよ」
「……は?」
何でもないかのように告げられた学園長の驚愕の言葉に僕はただただ固まるのだった。
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