第29話

 無事に王妃陛下を治し、その後のお咎めはなし。

 ガッツリ報酬ももらって僕はウハウハ……人生終わったかと思ったけどしっかりと賭けに勝ち、いきなり己の地位は無事盤石となった。


「どう?体の方は」

 

 金を得た僕。

 まず一番最初に行うのアスカの治療である……アスカの身を蝕む病は特殊も特殊。

 ウイルスによるものでも、細菌によるものでも、遺伝子によるものでもない、本当に原因不明の病であり、呪いの方がより近い類のもの。

 治すには僕の力云々ではなく、薬を必要とする……けどまぁ、その薬が高いったらなんの。

 これまでは買えなかったのだが、国王陛下から貰った謝礼があれば買うことが出来る。


「……うん。すごく良くなっています」

 

 僕がアレイストル辺境伯閣下に頼んで用意してもらった薬。

 ダンピールなんかに売る薬があるかぼけぇ!というイベントをスキップして入手した薬をアスカが服用して既に一週間。

 すっかり顔色も良くなり、何も問題なく体を動かせるようになったアスカが自分の体の状態を見て首を縦に振る。


「日々良くなっていっています。これならお兄様のお仕事も手伝えそうです!」


 アスカは声に力を込めて僕へと言葉を発する。


「おぉー、それなら良かった……本当に」

 

 その姿を見て、僕はアスカの体が本当によくなっているのだと確認し、心の底から安堵の言葉を漏らす。


「ふふふ。これで、私も守られるばかりじゃありません!」


「とはいえ、まだ万全なのかどうかもわからないし、まともに運動したこともないからちょっとずつね?」


「わ、わかっています!」

 

 僕の言葉にアスカが頷く。


「それなら良いんだけどねぇ?ふふふ、僕は国王陛下から自主練するための使われずに放置されていた道場すらも貰ってきたから、アスカのリハビリもそこで問題なく出来るよ」


「おぉー!それは嬉しいです……スラムの私たちがこのハイエンドを動き回るのも少し怖いですからね……いきなり裏路地に連れ込まれてフルボッコにされそうです」


「……いやぁ、流石にそれはないと思うけどね?そ、そんな物騒なことは……精々無実の罪を吹っ掛けられて頭斬り落とされるくらいじゃない?」


「駄目じゃないですか」


「うん」


 僕はアスカの言葉に真顔で頷く。


「まぁ、冗談だよー。僕は一応国王陛下とも繋がり出来たしね。そんな大規模なことはしないと思うよ……せいぜいやっても暗殺者くらいじゃない?」


「やっぱり駄目じゃないですか!?」

 

 アスカは僕の言葉を受け、動揺の声を漏らすのであった。

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