第28話
ミリアにとってのロマルスは自らの希望であり、憧れであり、尊き神のようなものであった。
自分が彼に恋し、彼と同じ生を歩むなど……恐れ多くて考えることすらなかった。
「……ずっと、痛かったんだ」
だがしかし……あぁ、なんだ?
自らの希望としてその力を振るい続けていたロマルスは、常にその身を激痛に苛まれ続けていたのだ。
ミリアは聞いてしまった己の父から、ヴァンパイアの代償を。
いや、代償などと大層な言葉で呼ぶことなど出来ぬ……ただただよく考えれば当然の摂理。
皮膚を突き破って出血し、自らの体を鮮血へと変える。
それが痛くはずがないのだ……ロマルスはタンスの角に小指をぶつけてちゃんと痛がって地面を転げまわるくらいにはちゃんと痛覚もあるのだから。
「……ロマ、ルス」
今更。
ミリアがロマルスに対してもう戦わないでくれ、そう願ったところで何が変わると言うのか。
つまらぬ小娘の戯言など、ロマルスが耳を傾けるのだろうか?
明確な狂気を含み、自らの痛覚など顧みない彼を……どうしてただの小娘一人に止められるだろうか?
「……」
あぁ……だとしても。
ロマルスが、永遠と激痛に苛まれ続けるのを黙って容認できるだろうか。
ミリアが少なくない好意を、恋慕の念を、初恋の、どうしようもないほどの激情を向ける相手たるロマルスが、苦しみ続けることなど。
許せるはずもなかろう。
「……私が、守るよ」
ミリアはぼそりと呟く。
止められないのであれば、そもそもロマルスから戦う機会を奪おう。
もう二度と苦しまなくていい様に……己が守り、助けよう。
「絶対に」
ミリアの中の変化。
彼女の中で神格化され、絶対の力を持つ神が如き存在であったロマルスを、ミリアは守ると決意する。
さて、人に守られる神などいるのだろうか?
ロマルスはミリアの中の勝手で妄想押しつけがましい神で居続けられだろうか……守るべき人間、自分と同じ存在となったロマルスに対し、ミリアは何を思い。
ロマルスとどのような関係になることを望むのだろうか?
「……んん」
どこまでも王族で、上に立つ者らしく。
勝手で傲慢で我儘な王女様は真っ赤に染まった表情をロマルスの家へと向け、どことなく末恐ろしい、笑みを見せるのだった。
あとがき
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『神より与えられしチート能力として異世界へと持ち込んだ女神が地上では何も出来ないことが判明したので、俺TUEEEEEは諦めて億万長者を目指そうと思います』
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