第26話

 部屋の隅に移動し、結界を張り出した僕を前に警戒心をあらわにし、こちらへと近づいてくる近衛兵を右手で彼らの動きを制する……そして。


「……ごっぷ」

 

 僕は口から血を吐き、目頭に熱く、ドロドロとしたものが溜まるの明瞭に感じ取る。


「「「……ッ!?」」」

 

 ヴァンパイアは病など受け付けない強靭でチートじみた体を持っているが、半分人間であるダンピールの僕はヴァンパイアほどの病耐性がなく、ヴァンパイア流の治療行為を施すと普通に自分へとダメージが入ってくる。


「だ、大丈夫なのか!?」


 いきなり血を口から吐き、血涙を流し出した僕を見てこれまで警戒心マックスだった近衛兵が思わずと言った感じで僕を心配するような声を上げる。


「……こっぷ、問題は、ないです」

 

 僕は近衛兵の言葉に返答しながら自分の体を分解していく。

 皮膚を引き裂いて血が溢れ、血肉が絞り千切れ押しつぶされて血液へとその姿を変え、僕の体が徐々に解けていく。


「……んっ」

 

 ヴァンパイアであれば全身のすべてを血へと変えても問題なく再生できるが、僕は少しくらい残さないと再生できないので自分の体を少しくらいは残しながら体を分解していく。


「……まだ残っているな」

 

 自分の体を崩しての再生。

 これによって人間としての僕の血肉がヴァンパイアとしての僕の血肉と混ざることで自分の中にいるウイルス並びに細菌を帳消しに出来るのだ。

 自分の体を分解し、再生するということを数回ほど繰り返し、ようやく自分の中のものをリセット出来た僕は立ちあがり、結界を解除する。


「お見苦しいものをお見せしました」

 

 感動の再開を、自分のスプラッタで汚してしまった僕は深々と頭を下げる。


「べ、別にそれは構わぬが……さっきのは大丈夫だったのか?」


「問題ありません。人間とヴァンパイアのハーフであるダンピールたる私がヴァンパイアと同様の治療行為を行うと少々負担がかかってしまうのですが、それをリセットするのも簡単に出来るので心配なさる必要はございません」


「そ、そうであれば良いのだが……痛くはないのかね?その、かなり体を崩していたが……」


「いえ、普通に痛覚はあるので痛いですよ?ただ、慣れただけです……それで、ですが。私はこれからどうすればよろしいでしょうか?で、出来れば投獄からの処刑は辞めていただきのですが……」

 

「え、いや。うむ。決してそのようなことはせぬがゆえに安心すると良い」


「ありがとうございます」

 

 国王陛下のその言葉を聞いた僕は内心でほっと一息つく……僕は、賭けに勝った……ッ!!!

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