第24話
この場で顔を上げ、声を張り上げる僕に対して貴族たちがざわめきだし、僕を糾弾する声で玉座の間が埋め尽くされる
「私はスラムのダンピールであり、この世で最も胡散臭く、最も疑惑に満ち溢れた者であると自覚しております」
だが、そんな貴族たちの声を逆に押しつぶすかのように僕は一人、自分のよく通る声をこの場に響かせる。
「ですが、王妃陛下の病は治せる。そう、断言いたします」
多くは語らない……詐欺師のように口を回すのは時として相手に不信感を植え付けてしまう。
僕は短くも強い言葉で締め、真っ直ぐに国王陛下の視線を見据える。
さぁ、どうだッ!!!
病に倒れた王妃陛下とその王妃を愛する国王陛下の話は確かゲームにでも出ていた。
妻を失い、失意のどん底に沈んだことで国王としての責務を果たせなくなっていき、国が荒れていくという設定だったはず。
それだけの愛妻家であれば……もし、自分の前にどれだけ薄くとも、ほんのわずかなあ希望があれば縋ってくれるのでは……ッ!
「……我が妻を、治せると?」
僕の言葉を受け、国王陛下は一度上を向き、幾度かまばたきした後に真っ直ぐ僕を見据えて口を開く。
僕を見据える国王陛下の瞳には先ほどまでにはなかった力が宿っている。
「はい。問題なく……どのような病であっても治してご覧に入れましょう。それが我が身に流れるヴァンパイアの力にして本髄であるがゆえに」
「……よかろう」
僕の言葉に国王陛下は頷く。
「汝、ロマルスに対して我が妻の治療を命ずる」
そして、僕へと王妃陛下治療を任せるという決断を下す。
「陛下ッ!?正気ですか!!!」
「ご、ご冗談をッ!!!」
国王陛下の言葉を受け、多くの貴族たちが絶叫を上げるが、それを無視して国王陛下は言葉を続ける。
「これは王よりの勅命である。拒否はしまいな?」
「当然にございます。国王陛下」
来たァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
我が世の春ッ!!!これで将来安定ッ!約束されし未来ッ!!!
貴族たちの反対を押し切って僕の登用した以上、僕をそう簡単には捨てらない!
自分の判断が間違いでないことを示し続けるためには僕を断罪せずに、そのまま使い続ける必要がある。
あとは僕が調子に乗ってロシアのラスプーチンのようにならなければいける!
とりあえず僕は目の前にあった困難を独力で乗り越えたのだ!
僕は澄ました表情で国王陛下の言葉に頷きながら、内心で大喜びの大はしゃぎするのであった。
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