第20話
ハイエンドでマッサージ店をオープンしてから早いことでもう一か月。
夕方まで学園に行き、学園から帰ってきてから夕食の時間になるまでお店を開くという生活が固定化し、お店の方にやってきてくれるお客さんも常連さんで固まってきていた。
僕のマッサージ店はかなり評判が良く、かなり高位のお貴族様が常連さんとなってくれている……毎回くれる高額なチップが非常に美味しかった。
「……ぁぁぁぁあああああ、そこ、気持ちいいわ」
「どうかね?かなりいいマッサージであろう?」
「えぇ、そうね。大満足だわ」
時間的に今日最後のお客さん。
それは開店初日からほぼ毎日来てくれる常連さんであり、現在一時的に王都に滞在しているアレストル辺境伯の当主……その奥さんである。
普段は己の領地に滞在しているアレストル辺境伯夫妻は一時的に王都に滞在中……奥さんの方は昨日、王都にやってきたそうだ。
「……ん?」
アレイストル辺境伯夫妻の会話に耳を傾けながらマッサージしていた僕は一度手を止め、首をかしげる。
「あら?どうしたの?」
「……いえ……その、少々違和感がありまして」
手を止めた理由、それは違和感。
「……違和感?」
「今一度触らせてもらいますね」
僕はアレイストル辺境伯夫人の体へと手を触れ……微細な己の血を流し込み、その体の状態を調べていく。
「……赤死病?」
かつて、当時の人口を半分以下にまで減らした赤死病の名を僕は呟く。
「いや、その変異株かな?感染力が弱くなっている代わりに致死率が高くなっているのかな?むむぅ……」
「……え?そ、それはどういう……?」
「私的な意見ですが、アレイストル辺境伯夫人閣下は何かしらの病を患っている可能性が高いです。すぐに病院に行った方が良いでしょう」
「あら、そうなの?」
「自分はヴァンパイアのハーフであるダンピールです。ありとあらゆる病魔を支配すると語られるヴァンパイアの力での判断です。おそらく、間違いはないかと思われます」
「ここで治療は出来ないのかね?」
「申し訳ありません。本店はマッサージ店となっております。高貴なる方に治療を施すことは出来ません」
「一応、治療は可能なのか?」
「出来るか、出来ないかを聞かれるのであれば出来ますが……やはり、ハイエンドの病院に行く方が良いでしょう」
「ふむ。そうか……それではそうさせてもらおうか」
「出来るだけ早く病院に行くことをお勧めします。本日はお代は要りません……今からでも病院に向かうことをお勧めします」
「金を渡さないなどと言うけち臭いは出来んよ。診察代だ……レレ。行こうか」
「えぇ……わかりました。店員さん、気持ちよかったわ。また来るわね」
「またのご来店をお待ちしております」
僕は店から出ていくアレイストル辺境伯夫妻へと頭を下げ、見送るのだった。
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