第15話

 権力を笠に着せられて、僕が逆らえるわけがない。

 結局のところ、僕は三人からの潤沢なパックアップを受けてハイエンドの方に拠点を持つことが決まった。


「なんか、大変そうだね」


「まぁ、うん。ありがたいけど大変だよ」

 

 一限はサボることとなったが、別に昨日と違ってその後は普通に学園内、二限目の授業は問題なく出席できる。

 二限目の授業の準備を進めていた僕の元に一人の少年が近づいてくる。

 

 彼の名前はリリシア。

 亜人種のエルフであり、この国からは少し離れたところにあるエルフの王国の王子である。

 

 学園というか、この国のハイエンドでは亜人差別がそこまでひどくないが、だからと言って差別意識が一切ないわけではない。

 そのため、亜人であるリリシアは孤立気味であり……彼が同じく亜人種でなおかつスラムの人間、孤立する要素しかない僕との距離が縮めてくるのは当然とも言えた。


 リリシアはこの学園における唯一の友だちであり、親友と呼べるような間柄で、基本的に学園で僕はリリシアと一緒に時間を過ごしていた。


「友達として助けてあげたいけど、私じゃどうしようもなさそうだからなぁ」

 

 僕の言葉に対して事情も知ってくれているリリシアが口惜しそうにつぶやく。


「……相手が、相手。仕方ないよ」


 そんなリリシアの言葉に対して僕は苦笑しながら答える。


「結局私たちの国とフランクロ王国とでは国力に残酷なまでの差があるし……私の立場もそこまで強くないからなぁ。一応王子ではあるけど……エルフの国ではフランクロ王国と違って女権が強いからね。私の立場は微妙で」


 長命種であり、長らくの期間を他種族と交流を持たずに独自の文化を発展してきたエルフの国は非常にユニークな文化が多数存在する。


「いや、これに関しては本当にしょうがないよ。ある程度の被害は許容して、頑張るしかないかな」


「うん。頑張って、影ながら応援している。お店が出来たら絶対に行くよ。ところで何をするのかはもう決めたの?」


「普通にマッサージ店にしようと思っている。医者の真似事をダンピールでスラムの僕がやるのもねぇ」

 

 リリシアの疑問に僕は答える。

 治療行為においても僕はこの世界で最高峰の腕を持っていると自負しているが、ただのスラム餓鬼が王侯貴族などと言った尊き身分の方を治療するわけにはいかないだろう。


「うん、それが良いでしょうね……私が部屋で育てている植物の葉、上げようか?美容とかに使えるんだけど」


「え?くれるの?もらえるのならもらうよ?」


「うん。あげるよ……放課後、私の部屋に来てよ」


「うん、行くわ。ありがと……美容系で売れるものは本当にありがたい」


「喜んでくれるのであればよかったわ」

 

 僕がリリシアと雑談を交わしている間に授業の開始を知らせるチャイムが鳴り、教室に先生が入ってくる。


「あっ。それじゃあ、またあとで」


「うん、また後で」

 

 僕は自分の席に慌てて戻るリリシアへと軽く手を振った。

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