第13話
サレリア様の妹であるリリ様を治した後、とりあえずその場は解散となった。
長い間寝たきりであった妹とその回復を願っていた姉の感動の再開に僕は邪魔であろう。
途中で学園を抜け出した僕は早めに家へと帰ってアスカとの交流を深めてその日を終えた。
「ふ、ふふ。ようやく二人きりになれたわね!」
そしてその次の日、僕は一限目からミリア様に空き教室へと呼び出されていた……どれだけ僕は授業をサボるのだろうか?
「こうして顔を合わせたことが遅くなってしまい申し訳ありません。それで、自分に何のようでしょうか?」
「貴方にお礼がしたかったのよ……アル・レテンに攫われたときに助けられたのもそうだし、私の後ろ盾になってくれたお祖父さまに連絡をつけてくれたのもロマルスなんでしょう?」
「……お礼、ですか」
僕はミリア様の言葉に頷く。
「えぇ……そうよ。何をするのが一番喜ぶのか、色々と考えたのだけど、やっぱり一番はお金よね?かといって現金だけぽーんと渡すのも違うと思ったから……このハイエンドの土地に加え、その土地の上に建てるロマルスのお店兼自宅を作ってあげようと思っているのだけどどうかしら?」
「その話を詳しく」
ミリア様の言葉を聞いた僕は思わず身を乗り出す……なんだ、その最高過ぎる提案は。今まで冷たい態度を取っていたことに対して土下座しても?
「結局のところ、ロマルスに一番必要なのはスラムからの脱却。ハイエンドに拠点を持つのを後押ししてもらえるのが一番うれしいでしょう?資金なら問題なくあるし、王族としての影響力も今の私なら問題なく出せるわ……ハイエンドのすべてとは言えないけど、ロマルスの希望する土地の大体を私は用意できると思うわ」
「おぉ……」
なんという完璧な提案なのか。
「「ロマルス!」」
僕はミリア様の提案に感嘆していると、空き教室の中にカミア様とサレリア様が入ってくる。
「我の方で土地を用意し、その上にお主の望むものを建てられる用意がある!我が家の名を商売に使うことも父上より許可を取り付けた!どうだ?我と共にこのハイエンドで目立たんか?」
「昨日のお礼よ、君の商売を当家で最大限バックアップする用意は出来たわ……土地、建物、人、名声。なんでも用意するわ」
「……被ったな」
「……被ったわね」
同時に空き教室へと入ってきた二人の口から出てきたのは二人してまったく同じ提案。
いや、ミリア様のもあるからトリプルブッキングだ。
「ちょ!?私とも被っているわよ!二人とも!今は私のターンのはずでしょう!ロマルスの望みを叶えるのは私だから!」
「……え?」
カミア様とサレリア様の入室で一気に騒がしくなる空き教室。
三人ががやがや議論を続けるのを見て僕は何か、嫌な予感を感じるのであった。
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