第12話

「まず、初めに謝罪を。死血病は我らヴァンパイアに連なる者が他者に罹患させられる病。我らの同胞の一人がサレリア様の妹に危害を加えてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 サレリア様の妹さんが寝かされていた寝室から退出し、その隣にあった部屋へと入った僕とサレリア様。

 そこで僕は深々とサレリア様に向けて頭を下げる。


「いやいや!君が謝ることではないよ!別に他のヴァンパイアの凶行は何も君のせいじゃないわ」


「……ないのです。他のヴァンパイアがそのような凶行に出れるわけがないのです。私が5歳の頃に最後のヴァンパイアの村は焼き討ちされ、自分を除くすべてのヴァンパイアは息絶えております」


「えっ……?じゃあ、リリに死血病をかけたのは……?」


「私ではありません」

 

 僕は信じてもらえぬと思いながらもその疑いを否定する。


「そうか、私は君を信じよう」


「え?」


 そして、あっさりと信じてもらった僕は呆気にとられる。

 

「……にしても、うーん。リリが死血病をどこで拾ってきたか……か。特に思い当たる節はないなぁ。リリ……妹が最初に倒れた場所であるルルド伯爵家でも特に不審なことは起きていないし」


「……ルルド伯爵家っ」


 そして、僕がそんなことしている間にサレリア様の口から飛び出してきたルルド伯爵家という言葉に、うっかり僕は反射的に殺気を漏らしてしまう。


「……ッ!?な、何かわかったのか?」


「……すみません。少しばかり感情が高ぶってしまいました……ルルド伯爵家、なのです。最後のヴァンパイアの村に襲撃を仕掛け、私以外のヴァンパイアを殺したのは」

 

 僕は殺気を受けて驚愕の感情をあらわにするサレリア様へと謝罪の言葉を口にし、慌てて自分から漏れる殺気を無散させ、口を開く。


「……もしかして、ルルド伯爵家が、リリに?その情報が本当であれば……ヴァンパイアを秘密裏に自家で飼うことも?」


「いえ……それはどう、でしょうか?ルルド伯爵家はこの国の国王陛下より直々の命を受け、ヴァンパイアの村を襲撃しましたから。あの御方は人格者でもあられますし、サレリア様の妹に何かするとは考えづらいですが……」


 それに、うちの村のヴァンパイアの腑抜け具合は尋常じゃなかった。

 死血病を扱える者がいると思えないけど。


「うーん。ここは要調査、と言ったところね……とりあえず、私は君に感謝の言葉を告げるわ。妹を治してくれてありがとう。決してこの件で君に危害が加わることがないようにしておくわ。だから、安心して頂戴」


「……ありがとう、ございます」

 

 僕は想像を超える良い待遇に困惑しながらもサレリア様へと感謝の言葉を告げた。

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