第11話
死血病に罹っているというサレリア様の妹。
ヴァンパイアにとって決して無関係ではない死血病の名を聞いた僕が何もせずノータッチというわけにはいかないだろう。
僕は学園を抜け出してサレリア様と共にその妹さんが病で倒れて眠っているというハイエンドの屋敷の一つにやってきていた。
「ど、どうかしら?」
「……どういうこと?」
サレリア様に案内されてやってきた一つの部屋。
そこに寝かされていた一人の少女を見て僕は眉をひそめる。
サレリア様から紹介されたその子は間違いなく死血病にその体を蝕まれていた。
「既に、ヴァンパイアは誰も……いや、別にいたとして脅威に、など……血の災厄はとうの昔に滅んでいる……今の、牙の抜けたヴァンパイアに……」
死血病など、一体誰が……。
僕はただただ困惑し続けることしか出来ない。
「ろ、ロマルス!結局どうなんだ!?私の妹は治るのか!?」
「……あっ、すみません」
考え事をしていた僕はサレリア様に肩を揺すられて視線を彼女の方へと戻す。
「問題なく治すことが出来ますよ」
「本当かッ!?」
「えぇ……今、治してしまっても?」
「そ、そんなサクッと治せるものなのか?」
「はい……死血病はかなり特殊な病ですので。ヴァンパイアの血を引く自分であれば問題なく治すことが出来ます」
「そ、そうなのか……それではお願いして、も?」
「はい。承知致しました」
僕はベッドに寝かされているサレリア様の妹さんへと手をかざし、目に見えないほどに小さくした自分の血を妹さんの体に染み込ませていく。
妹さんの血管内に存在していたウイルスのすべてを集めて吸収……そして再び己の
血を僕へと戻せば治療は終了である。
「これで病は治ったはずです」
「も、もうッ!?」
「死血病は本当に特殊な病なのです……その他の病であればここまで簡単にはいきません。十数分もすればこの御方も立ち上がり、何不自由なく行動できるようになるんはずです」
「そ、そうか……そうなのか。それは、良かった」
僕の言葉を聞いたサレリア様がほっと息を漏らす。
「それはそれとして……少し、別室の方でお話させていただけないでしょうか?死血病とは本当に、特殊なのです。サレリア様の妹様が死血病に罹った。これは、本来ありえないことなのです」
「別に構わない。私の妹を治してくれた君の話であれば快く……君は誰よりも美しいしね」
僕の言葉にサレリア様は快く頷いてくる。
「ありがとうございます」
そんなサレリア様の言葉に対して僕は深々と頭を下げた。
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