第8話
一限目はサボったが、二限目からはしっかりと授業に参加した僕。
僕は一応前世で高等教育を受けているし、この世界でもアル・レテンに参加していた際、最低限の教育は受けていた。
それに加えてこの体の性能もピカイチだ。
結局のところ、学力もある程度生まれながらの才能に依存するのだ、スポーツと同じように。
どれだけ熱心に特定のスポーツへと人生を捧げても、一流の活躍するプロ選手にはなれないのと同じように。
天才と称されるほどの才覚を持った体に生まれた僕は学習能力も前世とは比べ物にならないほども上がっており、前世の記憶にアル・レテンの教育。
それらがすべてあって僕は生まれながらにして英才教育を受けている者たちが受ける上流階級向けの授業にも問題なくついていけていた。
まともな教育などないスラム出身の生まれで。
「……むむぅ」
そんな僕の一番の悩み。
それは昼食の時間、己の腹を満たす学食のことである。
この学園だと誰もが昼食を摂る際はカフェテリアの学食を利用するルールとなっているのだが、当然カフェテリアの学食は上流階級仕様。
一食で僕と妹が一週間暮らせていけるだけの金額が飛んでいく。
「いや、うーん。でも……り、臨時収入も入ったしな……」
金貨二枚。
僕の懐はかつてないほどに潤っている。
ちょ、ちょっとくらい贅沢をしても許されるのではないだろうか……?
ここ、二日まともな食事を食べていなくてお腹空いているし、午後の授業は実技である。
このお腹すきすきの状態で受けるのは……。
「でも、うーん」
とは言え高い。
一番安いのでも信じられないくらいに高いのだ。
「……いや、辞めとこ」
ここはハイエンド。
きっとそこら辺に生えている雑草もそこそこ上手いだろう……人間の死体に汚染されていないし。
うん、雑草食べよう。
「む?何処に行くのだ?」
カフェテリアの入口付近でウロウロと迷い続けたその先で、諦めて中庭の方に行こうとした僕を目立ちたがり屋の巨女が呼び止める。
「えっ、昼食として雑草を頂こうかと」
何を言っているんだ?僕は。
いくら急に話しかけられて驚いたからと言って自分が何をしようとしていたかを素直に話す阿保がいるんだ?
「はい?」
僕の言葉を聞き、目を点にさせる彼女を見て自分の発言を僕は後悔する。
本当に何をしているんだ、僕は。
「……ふむ、金か。金貨二枚ほどあれば問題なく学食も食べられるはずだが」
「いえ、これは妹との生活費に、と。本当に金銭面に余裕がなく、少しでも節約したいと思っておりまして」
目立ちたがり屋の巨女の言葉に対して、僕は素直に自分の現状を打ち明ける。
「ふぅむ……そうか。よし、我と共に来ると良い」
「はえ?!」
軽々と彼女に持ち上げられた僕は動揺の声を漏らす。
「我が学食を奢ってやろう」
「そ、それは非常にありがたいのですが……降ろしていただけると……」
「良いではないか!これは目立つッ!!!」
僕が数多く人の視線を浴びながら、彼女に運ばれる形でカフェテリアの中を進むのであった。
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