第6話

 どれだけ僕が拒み、嫌だと言おうとも全ては無駄。

 スラムの人間の立場などクソザコナメクジなのだ……学園長の言葉を拒否することはなんて出来るはずがない。


「高貴なる皆様方。薄汚いスラム出身のこの身が貴方様方の視界を汚すことをお許しください。私は本日よりAクラスの方に転入することとなったロマルスと申す者です。スラム出身というだけでなく、ヴァンパイアと人のハーフ。ダンピールという混じり者ですらあるこの身ではありますが、仲良くしていただけると幸いです」

 

 朝のHRの時間。

 教卓の前に立つ僕は深々とクラスメートたちへと頭を下げて自己紹介の言葉を口にする。

 ここに至ってダンピールであるという僕の手札を明かさぬのは愚策であろう。


「自己紹介ありがとうございました。本校の理念として身分の差を考えず、共に切磋琢磨するということがあります。ロマルスくんとも仲良くしてあげてください。それではロマルスくん。あなたの席はあそこです」


「承知いたしました」

 

 僕は担任の先生の言葉に頷き、示された席へと座る。


「ふふふ……また会えたね、美しい君」


 担任の先生に示された僕の席。

 そこは一番うしろの窓側の席という大当たり席……なのだが、その代償なのか、隣の席に座っているのは美しいもの大好き少女であった。

 

 というか、美しい君?

 あぁ。そういえば、僕と言うか、ロマルスは世界でもトップクラスの美少年という設定だったか。

 どうしても前世はフツメンの男の子だったから、美形と言われてもしっくりこない。


「お久しぶりでございます。先日は途中で退席してしまい、申し訳ございませんでした」


「いや、構わないさ。こうしてまた会えたのだからね……あぁ、やはり君は美しい。私の知る中でもトップと言える」


「お褒め頂き光栄です」


 ふむ。美しいものが大好き少女。、

 彼女の価値観で第一優先なのは見た目の美しさ。

 あれ?もしかしてこの子であれば僕も受け入れてもらえる?


「私は少々マッサージが得意でして……」

 

 一瞬にしてそう判断した僕は一切の社交辞令も前置きもなしにいきなり本題をぶっこんで見せる。


「ほう?君の美しさの理由は自身のマッサージにあると?」


「いえ、私の美しさは生まれつきでございます」


「あっ、そう」

 

 あっさりと美しいの大好きな少女の言葉を否定する僕に対して彼女の表情から色が消える。


「ですが、私のマッサージは既にある美しさをより輝かせることができます……ヴァンパイアはこの世界の誰よりも人体に精通する種族ですので」


「ふむ……なるほど。面白い。私に己が技術を売り込もうと言うのか……実に良い。君のマッサージにも興味があるし、そもそもとして君に触れてもらえることも褒美と言える。ぜひ、君のマッサージを私にしてくれ。あぁ、当然金は払うぞ」


 だが、それでも美しいの大好き少女は僕のマッサージを金払って受けてくれると告げる。


「ありがとうございます」


 っしゃぁぁぁぁあ!!!初めての客ゲットぉッ!!!

 表ではすまし顔を浮かべる僕は心の中で狂喜乱舞するのであった。

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