第5話
僕が学園長の口からどのような本題が出てくるのか。
それに対して不安感を覚え、全力で嫌そうな顔を浮かべている僕を無視して学園長は口を開く。
「やって欲しいことは簡単。ミリア・フランクロの護衛よ。金色のヴァンパイアと巷で呼ばれている貴方であれば問題ないでしょう?」
金色のヴァンパイア。
アル・レテンの構成員として活動していた時代につけられた僕の二つ名。
人間とヴァンパイアのハーフであるダンピールの僕につけられた謎の二つ名を学園長は口にする。
「無限の時を生きるとさえ言われているハイエルフの貴方であればヴァンパイアの本当の強さを知っているでしょうに。腑抜けて牙の抜けたヴァンパイアとは違う本物の血の津波を」
1500年という長い時を生き、ヴァンパイアが世界で初めて観測され、何千万人もの人間が亡くなることとなった大騒動を実体験として持つ彼女であればヴァンパイアの本当の、本物の強さを知っているはずだ。
すっかり牙が抜け、簡単に滅ぼされたうちの村にいたヴァンパイアとは格の違う本物を……ダンピールたる僕と本物のヴァンピールとの違いもわかるだろうに。
「貴方の能力は当時、人類最大の脅威であったヴァンパイアたちとも比べてもそこまで見劣りしないだけの実力がある……当然ヴァンパイアとしての性能は劣るけど、それを武術や魔法で補っているあなたは十分な強者。ミリア王女殿下の現状は貴方もわかるでしょう?」
「……僕、スラム出身だからわからない」
突然、置かれている立場が一変したミリア・フランクロの立場はかなり危ういと言える。
護衛が必要と言う話も納得のいく話ではある。
だからと言ってその護衛にスラムの餓鬼をつけるのは如何なものだろうか?
僕が学園長の言葉に対して首をかしげて誤魔化し、断固として学園長からの依頼を断る態度を見せる。
「まぁ、拒否権はないんだけど。既にあなたを一番下であるDクラスから、一番上であるAクラスへと移動させる手続きを済ませているわ。同じクラスであれば勝手に守るでしょ」
だが、そんな僕へと学園長は実に残酷はことを口にする。
「ちょ!?何してんの!?」
「別に良いじゃない。仲の良い女の子三人も出来たようだし、そもそもあなたの目的を考えるとAクラスの方が良いじゃない。金持ち多いわよ?」
「いや……いや、駄目だよ!!!悪目立ちは嫌なんだって!スラムの人間を舐めないで!?」
「ダンピールってことを明かしたらマシになるんじゃないかしら?別にこの国には亜人差別はほとんどないし、既にヴァンパイアの脅威は過去のもの。ダンピールにそこまでのアレルギー反応を見せないはずよ」
「いやいや!ちょ、はぁー!?」
僕は初手の初手。
まだ学園に登校し始めてから一週間も経たないうちに当初の予定から大幅にズレていっていることに動揺を露わにし続ける……クソッ!ミリア・フランクロのイベントを前倒しになんてしなけりゃよかった!
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