第13話
不吉の子。
私は生まれながらにそう呼ばれた。
私が生まれたその日には凶星がひときわ輝き、国中の占い師が世界の不吉な未来を占い……そして、母は私を産んだことでその命を落とした。
数多の欲と陰謀、女の愛憎が渦巻く後宮において、最大の後ろ盾である母を失い、なおかつ不吉な運勢と共に生まれたというマイナス要素まで持つ私が順風万風な生活を送れるはずもなかった。
どれだけ努力しようとも誰にも褒められることはなく、誰も頼りに出来ず、誰からも頼りにされず。
腫れ物のように放置され、ただ一人孤独に生きていた。
私は、ミリア・フランクロは誰が為に生き、何のために生きるのだろうか?
深く、深く、深く。
どこまでも深い闇の底でミリアは底へ底へと沈んでいく。
何も見えず、何も感じない……どこまでも暗く、黒い世界でミリアはただ一人。どこまでもただ一人である。
「あぁ……あの子は、あの子は……」
そんな暗い世界の中でミリアの頭の中に浮かぶのは自分を助けてくれた少年であった。
久方ぶりに誰かと話した。久方ぶりに誰かと行動した。久方ぶりに……ぁあ。
私のせいで、私のせいでッ、私のせいでッ!
あの少年も巻き込まれた。彼の未来はこれからだったはずだ。何もかもが、これからであったはずなのだ。
あぁ……なのに。
そのすべてをくだらない、生きる価値のない私が全てを壊してしまったのだ。
私にも優しく接し、これまでずっと助けてくれていた少年に対して仇を変えるような形で。
……。
…………。
………………。
何故ミリアはここまで沈んでいるのか?何故、彼女の心は闇に沈み続けているのか。
それすらもわからず、ただただミリアは普段隠し、抑え、見ないようにしている自身の闇とただただ向き合い続ける。
そして、どこまでも闇の中へと沈んでいくのだ。
『あの少年は死んだ』
『未来ある少年は不吉な存在に吞まれたのだ』
『愛する妹の名を叫び、唯一の残された家族である妹を幸せに出来なかったを悔みながら無残な死を遂げた』
どこからか聞こえてくる声。
それらは容赦なくミリアの心を蝕み、どんどんと闇の中へと引きずり込んでいく。
「あぁ……ごめんなさい、ごめんなさい……」
ミリアはどこまでも奥の奥……闇の底へと沈んでいく。
「私なんて、死ねばいい……生まれてなんてこなければ……」
彼女は落ちて、墜ちて、堕ちて。
闇の底。果て無き闇へと、光なきただ一人の孤独の闇の世界へと……。
『僕はまだ生きているッ!!!』
そんな中で、一つの大きな声がミリアの中に響く。
光が、どこまでも明るく澄み渡っていくような神が如き強い光が差し込んだ。
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