第12話
この世界において酸素や窒素、二酸化炭素と同じように存在している魔力。
ありとあらゆるエネルギーの元となり、生物の進化にまで影響を及ぼすその力こそが魔法という奇跡を生み出す素となっている。
魔力によって魔法が発動する理由については未だ研究途中。
目下最優先で進んでいる研究であるものの、魔法に関しては基本的に門外不出の一族の秘術であり、そもそも魔法に関する情報が少なすぎてあまり進んでいない。
僕を含めた異世界人全員がなんとなくの感覚で使っているのが魔法なのである。
「んー」
どのような魔法を使えるかはその人がどのような一族生まれであったのかに由来する。
生まれながらに固有の魔法をなんとなくで使える天才もいるが、そんな人間はごくまれである。
「血よ、我を覆え」
さて、そんな世界で僕が使える魔法は全部で三つ。
教育だとか、経験だとか抜きに本能で理解し、使えるヴァンパイア特有の血液魔法。
僕が生まれながらに使用することが出来た固有魔法である腐食魔法。
そして、最後に僕がゲームで見てきた経験からなんとなくで使える凡庸魔法。
この三つである。
「死に晒せ」
スラム出身で三つの魔法が使える僕は正直に言ってただのバグであり、それに加えてヴァンパイアの不死性を活かした格闘術を持つ僕はこの世界でも有数の実力者である。
「おぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!」
「……うっさい」
僕は身に纏う防具をすべて腐食魔法でその形を崩して使い物にならなくさせ、その体の穴と言う穴から粒子ほどの血を流し込んで巨人族の誇るその大きな体を蝕んでいく。
「しッ!!!」
そして、前世に家業として習っていた刀剣術を最大限活用して、接近戦で巨人族の体を次々と切り裂き、出血を強要させていく。
「……が、ガァ」
サンドバックのようにただされるがままになっている巨人族の男はそれでも闘志は失わず、いつまでも腕を振り回し続ける。
「無駄にデカい……なぁ、ッと!」
巨人族の男の内部に入り込んだ僕の血液は無尽蔵に暴れまわり、確かに内臓やら血管やらをズタズタにさせているはずなのだが、そこまでのダメージが入っているようには思えない。
結構外傷も与えているはずなんだけどなぁ……。
「ァ、ァァアアアアアアアアア」
巨人族の男はどれだけ傷を負っても狂ったように体を動かし、僕に向かって腕を振り下ろし続ける。
「……ァ、ァ……ァァァァァアアアアアアアアア」
「はぁー、ようやくか」
それでも巨人族は頑丈なだけでヴァンパイアのような再生能力は持ち合わせていない。
三十分ほど攻撃を休むことなく叩き続けた後、ようやく巨人族の男は体を倒したのだった。
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