第10話
アル・レテンのアジト内部を僕と少女は共に出口を目指して静かに走り続ける。
そんな最中。
「……来た」
何かを感じ取った僕は素早く行動を開始する。
「え?」
僕は自分の隣を走っている少女の体を守るようにして僕は抱き寄せ───。
「んぐっ!?」
ちょうどそのタイミングで飛んできた大量の杭が僕の体を突き刺す。
「伝説じゃないんだから、杭とか効かないよ」
僕は体を杭によって貫かれながらも腐食魔法を発動し、自分の体を貫く杭をすべて跡形もなくボロボロに壊す。
にしても危なかったな……あと少しでもズレたら少女にまで被害が及んでいた。
「だ、だいじょ」
「大丈夫だから黙ってて」
僕は突然の事態に動揺して大きな声を上げようとする少女の口を手で覆って地面を走り続け、自分の体から溢れ出してくる血を操作する。
「邪魔……『ブラッドレイ』」
そして、大量に姿を現したアル・レテンの構成員のメンバーへと血の閃光をお見舞いする。
本来であれば僕の血の閃光が自分たちの前に立ちふさがる構成員を軒並み倒して、僕は少女を抱えて足を止めることなく先に進み続けるはずだったのだが……。
「ッ!?」
血の閃光によって貫かれた構成員の体が大爆発。
爆発の衝撃で僕の足が止まり、熱線が僕の肌を焼く。
「自爆……ッ!?い、いや、ミレイユか!」
「御名答だぜぇ!金色のヴァンパイアさんよぉ!」
足を止めた僕。
その上から通路を蹴破って下へと降りてきたアル・レテンの頭領であるミレイユが僕の声に答えるように叫ぶ。
「クソッタレがッ!」
僕は厄介なやつの登場に眉を顰めて叫びながら魔法を発動。
自分へと迫りくるミレイユを衝撃で吹き飛ばす。
「……ロン、ド!?」
しかし、自分の意識を厄介者であるミレイユに向けすぎたのが悪かったのだろうか?
僕が胸の中に抱きしめていたはずの少女がロンドへと奪われる。
「……だけじゃない。結界、幻術、精神干渉もか。トップにNO.2……幹部まで勢ぞろいとは随分豪勢な手勢じゃないか」
僕が少女を奪われたのは自分の意識が散漫だったからではない。
用意周到に張り巡らせられた数多の罠の数々が原因だ……それにしてもアル・レテンの主要メンバーが勢ぞろいするとは。
なんと面倒な。
「離してッ!」
「騒々しいです」
ロンドに掴まれ、体をよじらせて叫んでいた少女はロンドの手によっていともたやすく意識を奪われる。
「テメェが相手なら仕方ねぇよなァ!」
僕に吹き飛ばされたミレイユも負けじと魔法を発動。
自身の全パロメーターを上げるバフの魔法に、僕の体を縛る封印魔法、そして僕の命を奪うべく向けられた数多の攻撃魔法の数々。
「……ッ、て?……え?」
それらの攻撃魔法に対して防御姿勢を取り、自分の元に迫ってくるであろうミレイユとの激突に備える僕であったのだが。
そんな僕の警戒とは裏腹にミレイユの魔法が直撃したのは僕ではなくその下。
床であった。
「……んなッ!?」
何をしたいのかわからず困惑していると僕はそのまま落下。
「あばよ」
「……ッ!?」
上からミレイユの風魔法を受け、さっきまでいた場所よりも遥か下。
完全に隔離され、ゲームにも僕の知識にもなかった大広間へと僕は落ちてしまうのだった。
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