第8話
地下に存在するとある独房の外。
「な、なんであの二人がいやがらねぇ!?」
「何処から逃げやがったッ!」
「クソッ!さっさと探すぞ!見つけられなきゃ俺らがッ!」
そこに男たちの焦ったような声がこだましていた。
分が良いのか、悪いのかもわからないような賭けであったが、どうやらその賭けに僕は無事に勝ったようだ。
「クソっ!なんでこんなことに!」
鉄製の扉を開け、中を確認すると同時に困惑の声を上げたアル・レテンの構成員は独房の中からいなくなった僕たちを探すため、迂闊なことに鉄製の扉を開けたままの状態にして何処かにいなくなった。
「行ったね」
僕が魔法で感知出来る範囲の内で敵が誰もいなくなったことを確認した僕は自分たちを覆っていた血を自分の体中へと戻し、ずっと押さえつけてしまっていた少女のことを離す。
「はふっ……はふっ、はひぃ」
「手荒に扱ってごめんね。でも、これで扉は開かれた。今のうちに逃げるよ」
僕にずっと押さえつけられていたせいで大きく息を荒らげている少女。
だが、そんな少女に構っている暇はないのだ。
「うにゅ!?」
僕は少女の手を掴んだまま、その場から逃走するべく走り出した。
■■■■■
アル・レテンの本拠地のマップはゲームでも出てきていたし、実際にかつての僕もここへとやってきたことがある。
隠し通路から隠し部屋まで完璧にここの形状は把握している。
「あ、あの……」
「ん?」
「て、手を繋がれてなくとも……私一人で進める、ですます」
「あぁ、ごめん。今離すね」
今の今まで繋いでいることすらも忘れていた僕は自分の隣を走る少女の声を聞いて手を離す。
「さて、今のところは何も問題なく進めているけど、そろそろ敵に出会ってもおかしくない……ちょっと広すぎだし、敵の数も多すぎで接敵ゼロで逃げ切れる気はしないから、戦闘になることは覚悟してて」
「りょ、了解です!」
僕の言葉に少女は頷く。
「本当に頼りにしているから……お願いね」
「はいです!」
念押しするように告げる僕の言葉に少女は力強く頷く……よし、これで少女も何故かずっとどこか上の空だったけど、もう大丈夫だろう。
「……うぅ。私に任せてください!とか言っておいてここまで全部頼り切り……申し訳ないわ」
「潜入とか、潜伏とか、逃亡とか。そこらへん僕は得意分野なんだよ。人には得意不得意があるからね。ここからは期待しているよ」
「期待……している。ふへへ。頑張るね!」
「うん、お願いね」
少女……ミリア・フランクロは現時点でもそこそこの強者であるはずだ。
流石に僕一人でアル・レテンを壊滅させられるのはきついだろうから、本当に少女が頼りだ。
「二人で絶対に生きて帰ろうね」
「うん!」
僕の言葉に少女は元気よく頷いた。
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