第7話

 ミリア・フランクロ。

 僕の住まう国であるフランクロ王国の第二王女であり、圧倒的な魔法の才と天性の美貌を持つ彼女であるが、とある特殊な事情より王宮内で不遇の立場に立たされてしまっている少女。


「大丈夫、安心して。必ず私が救って見せるから」


 そんな少女が僕の前で握りこぶしをにぎり、やる気を漲らせていた。


「私のせいで巻き込まれちゃったんだもの、せめて貴方だけは助けて見せるわ……せっかく学園に入学するための切符を手にし、人生がこれから明るくなるって時に死なせるわけにはいかないわ」

 

 僕と共にアル・レテンのメンバーに捕まった少女。

 この姿かたちに声、間違いなく彼女はゲームのメインヒロインの一人であるミリア・フランクロで間違いないだろう。

 

 確か彼女がアル・レテンに攫われるイベントもあったはずだ……色々と僕が動いちゃったこともあって、既に本来あるべきゲームの進行と変わっているところもあるだろうが、ある程度の流れならわかっている。


「別に僕だって何も出来ない雑魚というわけでもないんだよ?僕だって力になるよ。スラム街の人間だからってあまり舐めないで欲しいね?」

 

 ただ一人でやる気を漲らせている少女に対して僕は苦笑交じりに口を開く。


「あっ……ごめんなさい」

 

 僕の言葉を受け、少女は素直に謝罪の言葉を口にする。


「まぁ、僕はまともに教育も受けていないスラムの人間だしそうい……ッ!」

 

 言葉を話している途中で僕は自分たちが囚われている独房の方へと近づいてくる複数人の気配を感じ取る。

 それを受け、僕はすぐさま行動を開始。

 少女の口を掴み、そのまま壁の方へと体を押し付ける。


「……ッ!?」


 自分の体で少女の体を完全に隠しながら、ヴァンパイアにとってまるで手足のように使いこなすことのできる血を操り、自分たちを覆う。

 

 どういう原理かは使っている僕も知らんが、なんかヴァンパイアが操る血は周りの壁と血で覆っているものを同化させるカメレオンのような便利機能も持っているのだ。

 僕らヴァンパイアに連なる者が操る血は様々な便利機能を持つ少々特殊な代物なのだ。

 

 とりあえずこれで僕たちの姿を独房にやってくる人間たちは確認することが出来なくなるだろう。

 これで相手さんは独房から僕たちが既に逃げ出したと勘違いしてくれるだろう……まぁ、希望的観測でしかないんだけど、何もしないよりはマシだよね? 

 僕は驚愕に目を見開かせる少女を抑えこんだままこちらへと近づいてくる人間たちがここに到着するのを待ち続けていた。

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