第5話
スラムでの食事とハイエンドの食事の格差に苦笑し、瞳を輝かせるアスカの姿を見て笑みを浮かべた僕は次の日。
早速アステル学園の入学式に来ていた。
嫌がらせなのか、学園の方から指定された入学手続きの日が入学式の前日だったのだ。
「……久しぶりに着ると違和感凄いなぁ」
制服へと袖を通す僕はハイエンドのきれいな道を歩きながらぼそりと独り言を漏らす。
スラムに住む人間の服装が綺麗でしっかりとしたものなはずがない。
普段はぼろ布のようなものを身に着けている僕にとって学園から支給される制服はしっかりしすぎていて少し違和感があった。
「そして、あの中に入りにくい」
服への違和感を感じる僕の前にある一つの門。
学園へと入る正門の前には多くの貴族並びに大商人の子供たちが集まっており、スラム街に住む僕が入るにはあまりにもきつ過ぎる空間が出来上がっていた。
「……入学式が始まるギリギリまで人気のないところで静かにしてよ」
僕は正門へと背を向け、一つたりともゴミが落ちていないハイエンドの裏路地の中へと入る。
スラム出身の僕があそこらへんにいること自体褒められたことではにだろう。
「……おっ?」
裏路地を突き進む僕は僕は自分と同じ制服を着た少女を見つけて驚愕の声を漏らす……こんなところになんて誰もいないと思っていたんだけど。
この少女は何をしているのだろうか?
「……ぁ」
腰にまで伸びた黄金のように輝く金髪と宝石のような蒼い瞳を持ったスタイルの良い少女。
僕が裏路地を進んだ先で出会った少女もこちらに気づいたようでその瞳に驚愕の色を浮かべ、驚嘆の声を漏らす。
「あっ!貴方は昨日助けてくれた……ッ!」
「……ん?」
開口一番。
少女の口から出てきた言葉に僕は首をかしげる……昨日助けてくれた?
僕はこんな輝くような美人さんを助けた記憶はないが……もしかして変身魔法だろうか?
変身魔法であれば己の姿形を変えることも可能だ。
昨日僕が助けた少女が変身魔法を使ってあの場に立っていたのだとしたら少女の言葉にも納得がいく。
変身魔法を使い、姿を偽ったハイエンドの少女がノーエンスに誰も伴わずに訪れる……ますます面倒ごとの匂いが高まっているんだが。
ってか、ちょっと待って?この少女もしかしてゲームにも出てき……ッ!?
「誰ッ!」
目の前にいる少女に正体について思案していた最中、鋭い殺気を感じ取った僕は素早く反応し、自身の影から剣を引き抜く。
「結界ッ!?……んなっ!?しかも幽世結界!?」
自分と少女を覆う結界。
それも結界魔法の中でも最上位に位置する幽世結界が発動したのを僕は感じ取り、驚愕の声を上げる……結界ってそんな簡単に発動出来るものじゃないんだけどッ!
「す、すみまっ!?」
謝罪の言葉を口にしようとした少女は何処からか飛んできた魔法を喰らっていともたやすく意識を失う。
唯一味方になりそうだった少女は意識を失い、残されたのは僕一人。
敵の数は不明で、幽世結界に囚われている僕は既に圧倒的劣勢。
「……ふぅー、無理だね。これ」
僕は抵抗を諦め、剣を下ろす。
全力で足掻けばなんとか打破すルことが出来るかもしれないが、スラム出身のダンピールである僕がこんなところで全力を出すのはあまりにもリスキーだ。
最低限の備えだけした後に剣を下げた瞬間、どこからか衝撃を受けた僕はあっけなく意識を失った。
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