第3話
王都の中央部、貴族や大商人などが住まう高級住宅街であるハイエンド。
壁で区切られ、それを囲うようにして広がっている一般階級の平民たちが暮らす街、ノーエンス。
そして、ノーエンスにすら区分されない本当の最下層、スラム。
何故か本来いるべきでないノーエンスの裏路地にいたハイエンド住みの少女を助けた僕はそのまま少女の護衛も兼ねてハイエンドの方に戻ってきていた。
「今回は助けていただき感謝致します」
そして、僕は自身の懐事情を考えるとどうあっても行くことの出来ないハイエンドのレストランの方へとやってきた。
助けてくれたお礼とのことで少女がご飯を奢ってくれるというのだ。
なんとありがたい……なんとなくで助けて本当に良かった。このご飯一つで大量のお釣りが来るというもの。
「いえいえ、当然のことをしたまでです……それに、僕がいなくとも問題なかったでしょう?あれくらいであれば問題なく撃退出来たでしょう」
「いえ、私は少々力のコントロールが苦手でして……結界も貼っていない相手に対して下手に魔法を使ってしまうと殺してしまう可能性があるのです」
そんな僕の言葉に少女は首を振りながら弱弱しい声で否定する。
「……そうですか」
何をほざいているんだ、こいつは?
そんなことを僕は考えながら料理が運び込まれるのを待つ。
「ですので、本当に助かりました。深い感謝を」
そんな僕へと少女は深々と頭を下げる。
「そうですか……ところで、何故貴方がノーエンスの方にいたのか、一体貴方が何者なのか、などは聞かないほうが良いでしょうか?」
「……あっ、そ、そうしてくれると助かり、ます」
僕の疑問に対して少女は首を縦に振って頷く。
「えぇ。深堀りするような真似は致しませんので大丈夫です。ここでのことを他の人に話したりもしませんよ」
深堀りしても面倒な問題ごとが出てくるだけ。
ここは逃げの一手だろう。
「ここでの食事代一つでチャラです。それ以上は僕も望みません……肩入れしすぎるとこちらにも飛び火してしまいそうですからね」
「……ッ、ご配慮感謝致します」
僕の言葉を聞き、少女が再び深々と頭を下げる。
「ささ、料理の方も来ましたし、これ以上の深堀りはなしに致しましょう」
「……えぇ。そうですね」
少女は僕の言葉にゆっくりと頷いた。
■■■■■
食事を済ませ、自分が助けた少女と別れた僕は今度こそハイエンドから自分と家族が暮らすスラムの方に向かって歩き始めていた。
「助けに入って良かった!」
食べるふりをしてパックに詰めていたご飯を持って僕は帰路を歩く……ハイエンドの中でも高そうなレストランの食事。家族も喜んでくれることだろう。
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