第2話 言葉の釘
学校に向かういつもの坂道を歩いていると
ふと聞き覚えのある声が僕の背中に声をかけてきた
声の方に振り向くと、黒い学生帽に黒い学ラン肩まで伸びたさらさらの黒い髪の
少年が立っていた、となりのクラスの風間レオだった
彼は今日も黒々とした大きな目を僕に向ける
青白く透き通るような肌に今にも消え入りそうな
華奢な出で立ち 僕はいつも彼から儚さを感じる
僕には白と黒しか判別できない
がしかし彼を説明するうえで青白いという言葉は一番適切な表現だと思う
そんなこの上ないほど無意味な思いに更けていると
黒々とした大きな目が僕を覗きこむ
「ねぇ聞いてる?どうしたのぼーっとして」
彼は捨てられた子犬のような顔で僕をじっと見つめている
「ごめん考え事してた」
僕はそっけない態度で言った
「もう、トオルはいつもそうなんだから、レオと話すのそんなにつまんない?」
レオは不安そうにたずねる
「そんなことはないと思うけど……」
僕はそうとしか言ってあげられなかった
「ないと思うけどって……」
僕の煮え切らない返事にレオは眉をひそめたが
すぐに表情を変えた
「でも、トオルとこうして、偶然会って、一緒に学校行けるんだから、何でもいいよ!」
「それは偶然じゃなくて毎日レオが僕を待ち伏せしてるだけでしょ?
毎日同じ事して楽しい?」
まさか僕が気づいていないとでも思ったのかレオは慌ててこう言った
「まっ!待ち伏せなんて人聞きの悪い!レオはいつも通り偶然会ってるだけ!
でも、それがいいんだけどね」
「いつも通りの何がいいの?」
彼は開き直ったのか屈託のない笑顔で
「いつも通りが一番いいんだよ!いつか思い出すよ!つまらない日々も大切なんだって!」と続けた
僕は基本的に人の言葉など右から左へというタイプだが、この時は何故かレオの言葉が僕に響いた
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