僕の一番美しくて一番残酷な愛

彩場リョウタ

第1話 今日も昨日も

人はいくらでも残酷になれる、人の欲望とは果てしないもので

ひとつ叶えばまた欲しくなるもの

だが僕の欲望はただひとつ


それは"愛する人の血"を見ること


その為なら、誰が傷つこうと関係ない

ほら、今まさに僕は残酷な人間になろうとしている



目覚ましのけたたましい音は

退屈な1日の始まり、今日もまた同じ1日が始まる合図だ

まるで何かの罰のように

僕の世界に彩りなどない

僕は生まれつき白と黒しか認識できない

全てが白と黒だけで織り成されている退屈な世界


そんな悲しい行き場のない感情に浸っているうちに

声が聞こえてきた

「トオル!起きてるの?学校遅れるわよ」

ドアを隔てた向こう側に立つ母の声だ

僕はなにも言わず固いベッドから身を起こし支度を始めた

その間も母の僕を起こす声は絶え間なく続いた


部屋を出ると突然出てきた僕に母は一瞬驚いた表情をしたが

「起きてるなら返事くらいしなさい!朝ごはんは?」という問いかけに

僕が「いらない」というと

母はすぐに表情を変えしかめっ面でこういう

「朝ごはん抜いちゃ力がでないわよ!」

何故毎朝この不毛な押し問答をしなければならないのか

僕は生産性のない会話から逃れるように

母を無視し、階段を下り1階の洗面所に向かった


バサバサの歯ブラシに力を込めひとしきり洗った後

顔を洗いながらまるでループしているかのような毎日にため息をついた

涙が出そうだったが、そこまで感情的には基本ならない

なぜなら泣いたってこの世界は変わらないから

僕は顔の水滴を一滴残らず拭き取り

着ていた制服と短い髪を整え鞄を手に玄関に向かう

母が玄関で待ち構えていたが

僕はなにも言わず

いってらっしゃいと言う母の声を後に家を出た

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