白痴

白痴

目をくれたそれだけで野が焼けてゆく

絵踏して言葉を垂らす犬だつた

心臓も苗床にして生きてゐる

DMのやりとりだけぢや朧月

産み落とす場所を探して啄木忌

欲しいのは立夏の舌が鳴るリズム

疑いも食べてほしくて五月闇

鼓膜、手に乗せられてゐる栗の花

飢ゑてゐるわたしの肌にレース編む

胃に暮らす天道虫の名をつけて

生身魂卑しくなつたから打つて

信じたら壊れるだらう寝待月

鶏頭になる真ん中を忘れるな

真面目つてどこにある国とろろ汁

胎盤を養分にしてくれ花野

アーメンは血の色だから神無月

池普請さいごだつたら目を拾ふ

忘れない吐息が柚子湯だつたこと

火の番が起きてしまつたから逃げて

殺めても殺めても好きなら枯野